最後の言葉

総悟が戻ってきた。思ってたよりもずっと早かった。でも、晴れ晴れとした顔をしていた。
武州に送り出すときは家で自害しないか大分心配したものだ。
近藤さんに挨拶した後、俺の部屋によってきた。
「土方さん、いますかィ」
「おぉ、入れ」
すっと障子を開けて入ってくる。
「ご心配おかけいたしやした。明日から通常任務に戻らせていただきます」
律儀にお辞儀をすると、懐から手紙を出して俺に渡してきた。
「姉上からでさ」
そこには、きれいな字で『十四郎様』とあった。
受け取らないでいると、手紙をおいて立ち上がった。
「きちんと読んでくだせィ。それは・・・」あんたへの遺言・・・でさ。と告げると出て行ってしまった。
まさか、あいつが俺に遺言なんて・・・。ためらった後に手紙を取り上げ読むことにした。
そこには、最後の恋文のようなそれでいて、俺にあてた、俺だけへの遺言だった。
俺は目頭が熱くなるのが自分でわかった。
「すまなかった・・・ミツバ、すまなかった」
「謝らないで、十四郎さん」
振り返るとそこにはミツバがいた。
「・・・ミツバ?」
「ほかに誰に見えますか」ミツバは笑顔でいった。
「お前・・・どうして?」
「ちょっとだけ未練があったから出てきちゃいました。」意地悪く微笑むミツバに心が痛んだ。
「すまなかった」本当はもっともっと違うことを言いたいのにそれしか出てこない。
「謝らないで十四郎さん」ミツバも同じ言葉を繰りかえす。
「私が一緒にいたらきっとあなたは自分の夢を守れなかった。あの時決めた道でしょう。振り向かないで」
もし、自分の夢よりこいつをとったら俺はきっとまだ武州にいただろう。近藤さんとも総悟とも別れて
こいつだけを守って生きていただろう。
でも、あのときの夢は近藤さんとみんなと剣の道に生きることだった。
ずっとずっと思い悩んでの決断だった。どちらともとるなんて、あのときの俺にそんな器用なことができなかった。
「あなたたちと一緒にいれた時間があったからこそ、私は生きていけた。寂しくなんてなかった。」
ミツバは笑っていうと
「永遠なんていらなかった。一度だけあなたの素直な気持ちを聞きたかった。」
俺は、ミツバに手を伸ばした。俺の胸のうちにミツバを引き寄せた。
「愛していた、ずっとずっと。誰よりも愛していた。」涙ながらにそれだけ伝えると強く抱きしめた。
「わたしも愛してました。ずっとずっと。誰よりも」
どちらからともなく口付けを交わすと、ミツバは笑って、
「ありがとう、あなたの気持ちが聞けて嬉しかった。これで私は何の未練もなく眠れるわ」
「おいっ・・・」
「いつかまた、あなたの心を動かす娘ができたら、私のようにあきらめないで。あなたの我侭を通して。そして、その人を一瞬でいいから幸せにして。その幸せな一瞬がその人の永遠になるんだから。」
「ミツバ・・・」
「名前を呼んでくれて、愛してるといってくれてありがとう。私はあなたたちと会えて幸せでした。そーちゃんをお願いします。」
「まてっ・・・・」

「・・・ですよ〜。副長。早く来ないと片付かないんですよねぇ」
山崎の声にはっとして、目が覚めた。
「寝てたのか・・・」
あれは、夢?でも唇と腕に残る確かな感触。夢現で、障子を開けると
「副長、ご飯食べてくださいよ。片付きません」
と、山崎に言われた。「あれ?」と言葉を続けると
「いいことでもありましたか?すっきりした顔してますよ?」と言い出した。
「寝起きだからだろ」とだけ言うと、足早に食堂へ行った。

この1年後、話は始まる・・・。


やってしまいました。姉上様3部作です。
最後の一言、ツキヨミ編と繋がるようにしてしまいました。
この話の後にツキヨミ編の出会いを書きましたが、これが難航した。
大変でした、自分でまいた種なのに、辛かったですねぇ。
ちなみに前回は黄系、今回は灰系でまとめてみました。
この字の色は銀鼠という色だそうです。意外と黒に銀でもいけるんだなぁと。
ええ、土銀もちょっと好きだったりします。            1/5

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