愛唄(沖楽Ver)


「ふぅん」
沖田は土方の部屋を出て自分の部屋へ向かっていた。
後ろから、ばたばた走り出す土方さんの足音が聞こえる。
山崎の負傷がそんなに心配なんですかねぇ、・・・心配でしょうねぇ。
なんせ、自分の懐刀ですからねィ。

それにしても、あの唄。
確かに、最近よく聴く歌、なんだよなぁ。
あの部屋でかかりっ放しだったのもあって、頭から離れねぇや。
自室に入ると、ごろっと寝転がった。
目をつぶると余計に、その曲が頭を回る。
ちっ、舌打ちをすると、屯所を出た。
あてどころなく歩いていると、公園に出た。
そこに、いつも通りのチャイナ女がいた。

「よぉ、税金泥棒。またサボりか。」
「うるせぇ。そっちこそ、仕事しろィ」
ああ、こいつだけは、俺に素直に突っかかってくる。
俺の周りにはこうやって素直に話せる奴がいない。
土方さんにだって、近藤さんにだってこうは行かない。
あの人たちは、俺の上司だから、そのあたりは一応考えている。
そして、俺はナンバー3。
隊長格の人間とも違う。隊長に比べれば近藤さんたちに近いし、
でも、役職は隊長なんだ。俺の位置は中途半端。
だから、誰にも素直に話なんか出来ない。
でも、あいつは違った。俺に簡単に突っかかってきてしかも力もほぼ互角。
よくよく聞いたら、あいつは天人だった。夜兎とかいったか。
最初こそ、くそうるせぇ天人くらいにしか思ってなかったが、あいつと戦ってるとき、喧嘩うったり買ったりしてるとき、
俺は、真選組も何もかも離れた一人の人間として、生きていられる。
それを快く思ったのは、いつのころからか。

今日も今日とて二人して殺し合いにも近い喧嘩をする。
山崎はよく戦争みたいだ、と俺たちのことを言う。
俺たちは、楽しいんだよ、と山崎に言い返す。
お前もそうだろう、神楽。出来れば、そうであってほしい。
戦いながら、あいつの顔を見たら、心なしか微笑んでいるように見えた。

「なぁ、チャイナ」
「なんだヨ、サド」
「俺、お前を愛していますぜィ」
多分そういうことなんだと思う。誰にも渡したくない。
ずっとこうしていたい、これが愛って事でしょうねィ。
そして、それをさらっと言ってしまったのは、あのくそ土方の部屋で
あの唄を何回も聴いてしまったから、でしょうねィ。
「そんなこと・・・」チャイナは言うと、まっすぐに俺を見て
「ずっと前から知ってたネ」飛び切りの笑顔で微笑んだ。
「・・・ありがとう」なぜか俺は、泣いていた。

「で」と、あいつは言うと俺を見た。
「どうして、こういうことになるアルカ」
「そりゃもちろん。」というと、あいつを抱きしめて
「誰にも渡したくないですからねィ」と囁いた。
今日は、晴れの結婚式、俺たちの。
あいつを、万事屋から出すのがどれだけ大変だったか。
新八君は早かったけど、あの頑固親父が離さなくて大変だった。
何だかんだいって、あの時から3年もかかった。
お互い、結婚するなんて思ってもなかったが、お互いが離れたくないなら
いっそのこと一緒になるほうが簡単な話だろう。
で、何とか、夫婦になれるとなったら、今度は近藤さんが盛り上がった。
結婚式しないと、お祝いだ、なんて話になったらみんなで盛り上がった。
で、今に至ってしまった。
「まぁ、しかし・・・」
「だれも、こっちに興味なんかないらしいアル」
顔を見合わせて俺たちは笑いあった。
みんなは盛り上がりすぎて主役そっちのけで盛り上がってしまった。
「まぁ、それもいつものことだろう」
「そうアルな」
俺は、神楽の手をとると
「ありがとう、神楽。俺と出会ってくれて」
「こちらこそ。ありがとう。アタシと出会ってくれて」

「「あいしてる」」


ノープランで書き進んだ話が
結構いい形で追われて何よりでした。
沖田さんの立ち位置ってわからないんですよね。
それを、書いていったら、素直に話が出来るのはもしかしたら・・・。
と言うことで、書いていったらこうなりました。
これで、最初の銀新回想に続きます。
ドラゴンクエスト1〜3ってこういう感じなんです。3が実は物語の初めだった。
これに感動して、今回話の流れの中で、こういう感じになれて嬉しかったなぁ。
結果的に、愛唄というよりも、最後に愛してるを言わせたいってだけになった気が。
                                               20080511
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