愛唄(土山Ver)


きっかけは、何てことねぇ、些細なことだった。
見回りに行くとどこからともなく聴こえるあの曲。
音楽なんてそんなに聴かない。とくに気にしたこともない。
でも、なんとなく聴こえてくるあの歌詞、あの曲。
何回も何回も、その曲を聴いて、気になって珍しくCDなんて買って
部屋で何回も聴いて。その歌詞を読んで。
ああ、この曲はいい曲だ。なんて柄にもなく思って。

「おはようございます」
その日は、普通に朝一人で稽古でもと思って道場に行ったら見たことない奴が
道場の掃除をしていた。
「本日付で監察に配属されました。山崎退と申します。よろしくお願いします」
俺に、ぺこっと頭を下げてにっこり笑ったその青年は青年と言うには
まだどこか幼い顔をしていた。
「よろしく。俺は「土方副長、ですよね」
「ほぅ。よく知ってるな」
「ええ。土方さんは有名ですから。」それにと、そいつは続けると
「俺、近藤さんの道場にたまに行ってたんですよ」まぁ、自己流だったんですがね。と頭をかいた。
「ほぉ、では」というと、俺は竹刀を持ち
「久しぶりに、稽古でもするか。相手になってやるよ」
「はい!!」というと、あいつも竹刀を持った。
「ん?お前、短刀か」あいつの竹刀は、明らかに短かった。
「ええ、こっちのほうがしっくりくるので」
そして、稽古をしながら、思い出した。短刀で予想以上に強い少年がいた。
確かに俺も近藤さんも一目置いていたが、そうか、監察になったのか。
こいつは、もしかしたら将来化けるかもしれないな。稽古しながら思った。
「思い出したよ。お前のこと。短刀なんて中々いねぇし、筋もよかったしな。」
そいつはビックリした後、飛び切りの笑顔で
「本当ですか!!」嬉しいです。そういって頭をかくと
「土方さんには、全然勝てなくていつも、この人に勝てるようになりたいと思ってたんです」憧れでした。
と、そいつは言った。

それから2年たって俺は、何かと山崎に仕事を頼んだ。
山崎の仕事は正確で迅速。誰よりも信頼もあった。
山崎は、俺にあの時と同じように微笑んでくれるし、俺もあいつの期待にこたえた。
俺とあいつが組んだら最強で無敵、そう思った。
まぁ、日常の些細なことまであいつに任せちまってたまに
「俺は副長の召使じゃないんですよ」と怒らせることもあった。
「上司が部下使って何が悪いよ」とそのたびに悪態をついた。
そうすると、あいつは、やれやれというように肩を竦めた。

「あらら・・・土方さん。そんなに無防備に寝てると襲いますぜ」
カチッという異音に気づくと、総悟が至近距離でバズーカかまえてた。
「おまっ!!俺を殺す気か」
「それ以外にどういう気があると思います。これを構えるのに」
「さらっと言うなよ!!」
「?へぇ、土方さんも最近の曲なんか聴くんですねィ」
「なんとなく、聴きやすかったんでな。どこででも流れてるし」
「まぁ、確かに、いい曲ですねィ」
「で」というと、総悟を見やって
「なんか用か」と、寝起きの機嫌悪さたっぷりに言い捨てた。
「ああ、山崎が珍しく負傷して帰ってきたんで、ご報告「なにっ!!」」
「冗談はよせ。たたっきるぞ」
「本当のことでさ。」土方さんは喧嘩っ早くていけねぇ、というと、
「あいつには珍しくちょっと休養が必要なくらいですぜ。土方さんお気に入りの
山崎が。当分は自分のことは自分でやるんですね」
というと、あいつは自分の部屋へ戻りかけ
「ああ、あいつ病院じゃなくて、自分の部屋にいますぜ」
見舞ってやったらいいんじゃないですかィ、というと、本当に戻っていた。
「お前に言われなくても」行かないわけないだろう。
ほかでもない、山崎がやられたんだからな、しかも依頼内容は俺の仕事だ。

急いで、山崎の部屋へ向かった。
「山崎、入るぞ」
「・・・どうぞ」
入ると、山崎はそこまで、ひどい怪我はしていないようだが、それでもこいつが
ここまでとは、それでも珍しかった。
「すいません副長。」
「謝るなよ」生きてるだけで十分だ。と言って煙草の煙を吐き出した。
「仕事、当分出来ませんね。」
「少し休め。お前意外と働きづめだろう。」
「苦にはなりませんから。」
「いい機会だ、ちょっと休めよ」
「土方さんのお世話くらいは「いいから!!」」
俺は、わからなかった。どうして、こいつはここまで・・・。
「俺は、あなたに憧れてた。ずっとずっと。だから、おそばにいることが出来て、
あなたに認められるようになりたくて、それが俺の生きる意味なんです」
生きる意味・・・、俺がか。迷惑かけてばかりの。
「だから、俺はここで立ち止まりたくないんですよ」
「・・・だったら、休んでほしい。休めない奴を俺は認めねぇ」
「ひじかたさん・・・?」
「おい山崎よ」
「何ですか土方さん」
「うん。あの・・・笑うなよ」
「??」
「山崎、愛してるよ」
本当に、今あいつに言いたいことだったんだろう。
それが歌になってるから、聴きやすかったんだろう。
ついつい、言ってしまった。
山崎は、笑うと
「今、流行の歌みたいですよ。土方さん」
「バカにすんな」
「はいはい」
「とにかく、お前が外れるのは痛いが休養も大事だ。共に生きるものとして、
そのあたりはしっかりしてもらうぞ。」と言うと深呼吸をして、
「山崎、俺たちは共に生き、共に死のう。」
「長生きできそうにないですけどね。」
「ああ、それでも、お前の隣で刀振り回して死ねたら、それはいい生涯なんじゃないか」
「あなたは殺させません。俺の命に代えても」
「俺も、お前を死なせない。俺の命に代えても」
真剣にみつめあった後、山崎は俺ににっこり微笑んで言った。

「俺も、愛してますよ。土方さん」


おおはまりしましたね。そして、これは考えてからできるまで、全然時間がかからなかった。
まさに、大安産。しかも、3部作。
全部できました。この二人は、書きやすいから、全然苦にならない。
本当は、最初に、愛してる、と言いたかったのですが、そうすると、話がおかしくなるので
途中に出しました。
もう、だんだんと愛唄関係なくなってる気がして来るんだよねぇ。 
                                              20080511
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