『其の事ばかりを想って嬉恋編』

        2人がすれ違ってからどのくらいたったのだろう。
        真選組をにわかに忙しくした大捕物も何とか終幕を迎え、また平和な日々が戻っていた。
        「いー天気だなぁ」
        久しぶりに訪れた平和をかみ締めながら洗濯物を干し終える。
        そういえば、あの時もこんなにいい天気だったなぁ。
ツキヨミは土方の事を考える。
副長さんあれ以来さらに避けているようで、屯所内でも見なくなったなぁ。
もう、だめなのかな・・・。ツキヨミは悲しく笑った。そこに局長がやってきた。
「ツキヨミちゃん」いつも笑顔の局長。局長は誰にでも優しくきっと副長以上に人望も厚い。
「局長さん、どうしました?」
「近藤さんでいいのに、ツキヨミちゃんは固いなぁ。そうそう、ツキヨミちゃんここに来て1年になるだろ、
たまには1日休みなよ」
「えっ!?」
「ずっとずっと働きづめだろ」
首を傾げて考え込む。もともと働きづめには慣れてるしでも、ここに着てからいろいろ余裕もあるし、
そうだっけ・・。
「働きづめなの!明日は1日休み。これ、局長命令だからね。」
どこに局長命令をつかうんですか。・・・でも、嬉しかった、休みも局長の心遣いも。
「では、遠慮なく。明日はゆっくりさせていただきます」
「おう!!」それだけだから、じゃあな、といって局長はいってしまいました。
でも、やることないし、いくとこないし。部屋でゆっくりするのも肩身狭いし。何か考えておこう。

そして、次の日
「ツキヨミちゃん」笑顔の局長。どうしたんだろう。
「局長さん・・・、近藤さんどうしたんですか?」
「そうそう、近藤さんだからね。それより今日の予定は?」
「えっ。えーと、ちょっと買い物くらいですかねぇ。
この辺の地理は明るくないから迷子になってしまうかもしれないですし」
局長は安心すると、思いもよらない人を目の前に出してきた。
「なっ、ツキヨミ!!」「副長さん!!」同時に叫んでしまった。
「トシも今日休みなんだ、こいつ休みにしても引きこもるばかりだから、
街中案内してもらうといい、いいだろトシ」
あわわわわ・・・。副長さん久しぶりに見たのに、今日一日一緒に行動なんて、死んでしまうかも。
でも、副長私のこと避けてるし、すぐに断るよねぇ。なんて思っていると
「やることねーし、俺はかまわねえぜ。ツキヨミ、お前は?」
「えっ・・・、あの〜ご迷惑では」
「別にいいっていってるだろ」
「・・・、お願いします」
怖い、ものすごく怖い、断れない。でも、嬉しい。愛しい人と1日一緒。心臓動き過ぎないように。
隣を歩く副長さんは相変わらず瞳孔開き気味の顔でタバコをくゆらし、歩いてる。
黒い髪、青い瞳、今日は休みだから着流し。和服も似合うなぁ。
このまま時が止まってしまえばいいのに。
まだ、屯所の近くだから、わからないところはない、沈黙が続く、でも暖かい。

総悟がいいんだろうに、どうして俺と歩く気になったのだろうか。
まぁ、いい。どう思われていようと今日はこいつと2人でいれる。それだけでかまわない。
「なんだ?」そんな考え事をしていたらツキヨミがこっちを見ている。
あいつは慌てて俯くと「なんでもありません」という。俺じゃやっぱりだめ・・・なんだな。
屯所からちょっとはなれたので、いろいろなところを案内した。あいつは楽しそうに眺めて回る。
やっぱり年頃なんだな、と思うのは店屋に結構食いつくところだ。
そういえば、あいつの着飾った姿を見た事がない。なんでだ・・・。
「おい、そろそろ昼でも食うか」「あっ、そうですね。」
俺が見ると、やっぱり俯く。なんだよ、何で俺と一緒にいるんだよ。こんなにつまんなそうなのに。
行きつけの定食屋につくと、いつもの、と注文する。あいつも何か頼んでる。
頼んだものがくると、あいつが「外でも土方スペシャル浸透してるんですか」といってきた。
「なんだ、悪いかよ」と、ぶっきらぼうに言うと「そういうわけではないですよ」と笑った。
「ふぅん」「??」「今日始めて笑ったな、ツキヨミ」ニヤリとすると真っ赤になって俯いた。
「食べ物をはさんだ会話には人をリラックスさせる効果があって、思うより話せるんです」とあいつは続けた。
そうなのか、ああ、もしかしたら今がチャンスなんだな。
「・・・その。ツキヨミ」「なんですか」「この間は悪かったな。あんな事して。」
あいつは赤い顔をもっと赤くさせて「・・・。その、あの、大丈夫です。」と一言だけ言った。
定食屋を出ると俺はあいつが朝言ってた事を思い出した。
「お前、確か、買い物したいって」「あ、そうでした。・・・付き合ってもらってもいいですか」
赤い顔でそんな事いうな。脳内変換しちまいたくなる。「あ、あぁ。かまわねぇよ」
付き合った先は手芸屋毛糸を選びたいそうだ。俺を見たり毛糸見たり、あいつはなにやってんだ。

副長を見ながらだったら何色が似合うか絶対わかるはず。見なくてもわかるけど、見れるほうがありがたい。
あれがいいけど、絶対届かない。脚立か何か・・・。と思ってたら
「ほらよ、これだろ」と、副長さんが取ってくれた。「いい色だ」「そうですよね」素直に嬉しかった。
笑顔で見上げたら目が合ってしまって、咄嗟に俯いてしまった。
こんな至近距離で目があったよ〜。死んでもいい、今ならこの思い出のまま死ねる。

総悟へ何か編むのか?にしちゃ、あわねぇ色だなぁ。でも、俺は好きな色だ「いい色だ」「そうですよね。」
至近距離にあいつの笑顔。初めて、こんな近くで、あいつの笑顔を見た。綺麗だな。
思考回路が一瞬とまる。あいつを見つめてしまう。向こうもわかったようで、すぐに俯いた。
「こっちの色はどうだ」と、総悟に合いそうな色を出してやった。いろいろ見比べていたが
「これのほうが合ってる気がするのでこっちで」と、言いその後もいろいろ見繕っていた。
「ずいぶん買ったな」「ちょっと気合はいってしまってゆっくり見れたし」「重いだろ持ってやるよ」
俺は、すっとあいつの荷物を持った。あいつは横で何かいってるが無視の方向で。
そして、最後にとっておきの場所に案内する。大事な人にしか絶対教えない場所。
もう日もだいぶ傾いていた「綺麗な夕日〜」「あぁ、綺麗だな」夕日を浴びたお前が。
ちょっと夕日に見とれていると、ツキヨミが
「・・・副長さん。今日はありがとうございました。」とお礼を言い出した。
「ん?なにがだ」「いろいろ連れて行ってくださって。嬉しかったです」
「そーか、そりゃなにより」お礼を言う時でもあいつは俯いている。本当に楽しかったのか?
「お前、今日は楽しかったのか」思ってたことが口から出てしまった。
「楽しかったです買い物もできたし、いろいろな場所も知ったし、それに・・・」
といったところで、口をつぐんだ。明らかにばつが悪そうだ。
「それに?」聞き返しても、返事がない。はぐらかす術も見つからないといったところか。
「言え」「いやです」「言えよ」「だめです」じれったくなってきた俺は「言え、副長命令だ」
「ずるい」「大人はみんなずりーよ」タバコに火をつけニヤリと笑う。
「・・・、そ、それに、ふ、副長さんと1日一緒にいれたのが何よりも嬉しかったんです」
声はどもっても、まっすぐ俺を見た。つか、俺といれたのが嬉しいって?!
「へっ!?」思わずタバコを落とした。「あつっ!!」「土方さん!!」
あいつは俺の指に口付ける。つかそれって傷口にやることで関係なくねぇか。
ツキヨミも咄嗟の反応だったのだろう、気付いて見上げたツキヨミと目が合って、ちょっと笑うと
「つかお前総悟が好き、なんだろ」と話しかけた。
「沖田さん、ですか?どうして。」
「前にいってたじゃねぇか、不思議な魅力の在る人がすきだって。」
「私は、副長にそれを感じているのですが・・・」
「いつもそいつを見てるんだろ」
「遠くからいつも・・・見てました。近すぎると真っ赤になってしまってそんな顔を見せるのが恥ずかしくて。」
あぁ、だから俺が見てるときはこいつと目も合わないわけだ。そんなことだったのか。
だから、総悟に合う色の毛糸はとらなかったのか。だからあの時誘いを断らなかったのか。
俺は、おかしくなって、つい笑い出してしまった。
「なにがおかしいのですか!!」ツキヨミは恥ずかしいのか大声になっていた。
「わりぃ・・・、な」そんなツキヨミを抱きしめる。
「ふっ副長さん!!」「ちょっと黙れ」「・・・・」俺の腕の中に愛しい人。カチカチではあるが。
ちょっとして、離れると「お前、もう、副長さんなんて呼ぶのはやめろ」
「えと・・・、土方さん」「うーん」「じゃ、じゃあ、とうしろーさん」
「・・・どっちでもいい」名前で呼ばれる事なんてめったないから、ちょっと照れくさかった。
でも、一つどうしてもふに落ちない事がある。俺は、ツキヨミと屯所に帰ると、総悟を探した。
「総悟。お前なんでツキヨミをあんなにからかった?」
というと、いやみな顔をして、「まだわかんねぇんですかい、土方コノヤロー」と悪態つき、話しだした。
ツキヨミが俺を好きなのを知っていた事、俺がツキヨミに惚れてるのを知っていた事、
ツキヨミは俺の思いに気付かずあきらめようとしていた事。
「土方さんにツキヨミの思いを話すのは簡単だがツキヨミがよろこばねぇ。だからからかってあんたが嫉妬するのを待ったんでさぁ。」
さすがにかなり鈍いでサァ、土方コノヤロー、と付け足しやがったそしてにやりと笑うと
「ツキヨミー、お前男のセンスがないでサァ」と言いながらツキヨミに近づく。
「てめっ、そりゃどういう意味だっ、てかツキヨミから離れろ!!」
総悟を追いかけながらちょっとは感謝しないといけねぇか?と思った。

ツキヨミが振り向くと笑顔の沖田さんと怒りの土方さん。くすっと笑うと、土方さんは照れながら
「ツキヨミ、飯食い行くぞ」と私の前を歩き出した。「はい。とうしろーさん」
今日も、いー天気だ。雲ひとつない突き抜ける青空、幸せってこういう事なのね。
土方さん、ついてゆきます。だから、突き放さないでくださいね。
                         
                   TO BE CONTINUED(おめでとうへ)


という事で、こちらは続きます。というか、甘い話本当に苦手です。なんだか話しがのっぺりするんですよね。
文才のなさを思い知ります。ヒレンジャーの悲しき定めというか・・・
シリアス系はすぐに浮かぶんですが、どうしても甘い話は苦しみます。
甘い話読むのも嫌いだしなぁ・・・。苦手なんです。こそばゆくなるっていうか。
この子が続いた原因は次の話にあるんです。その話はその話の言い訳欄で・・・。
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