其の事ばかりを想って 土方Side


はぁ・・・。心の中で溜息をつきながら煙草に火をつける。
煙を肺に押し込み、吐き出す。
「どうしてあんなことしたんだろうなぁ」ぼそっとつぶやいた。

なんて事はない、ただのボタンの掛け違い。
俺の前で怯えるお前が、あいつの前では笑顔で・・・。
それが悔しくて、苦しくて、堪えられなくて。
嫉妬だというのはわかる、俺が世界でたった一人大事だと想う人。

「沖田さん、あまり邪魔しないでくださいな。」
総悟は女中に何をかちょっかいばかりを出している。
「邪魔なんてしてないでサァ」
女中は苦笑しながらも楽しそうな様子。
ここのところ毎日そんなやり取りを見ていた。
「ツキヨミ・・・」
女中の名前をつぶやくといっそう不機嫌な顔になる。
俺の前では、顔も見ないで逃げるのによ・・・。

気がつくと、珍しくツキヨミは一人だった。
総悟は・・・、近藤さんに呼ばれてるらしい。ツキヨミも仕事が一段落したようだ。
「ツキヨミ」自然と話しかけてしまった。
あいつはビクッと驚き、俯いたまま振り向く。
「仕事終わったのかい」
「はっ、はい」
そのまま隣に座った。「今日はいい天気だなぁ」
「そ、そうですね・・・。」
「・・・・・」
沈黙だけが流れる。こういうときに総悟がうらやましくなる。寡黙な俺と違って、何か話をみつけてこれる。
何を話したらいいか、考えていると、急にツキヨミは立ち上がり
「じゃあ、わたしはこれで・・・」と離れようとした。
俺は咄嗟に腕をつかんでしまった。「・・・!!副長さん」
「まぁ、座れや」見上げると俯いたあいつの顔が見える、真っ赤な顔をしていた。
俺が見てるのがわかったらしく、顔をそらすと、真っ赤な顔のまま腰を下ろした。
「・・・、お前好みの奴はいるのか?」
何を聞くかと思えば、俺もこんな事しかでてこねぇ。
まぁ、惚れた女の好みを聞きたくないといえば嘘になるが。
「・・・はい。」
なんだ、いるのかよ。「とても、不思議な魅力のある・・・人です」
と、ツキヨミは付け加えた。・・・、誰だ?ちょっと考えをめぐらす。もしかして・・・総悟か?
あいつは大嫌いだが、何か人を惹くものがある。
「惚れた男の事以外見ないって事か・・・」
ボソッと言うと、また、あいつはビクッと驚き肩を震わせる。当たりか・・・。
そう思うと、なんだか腹立たしくなった、俺のほうを向かないツキヨミに。
八つ当たり以外の何者でもないのに、俺は感情の赴くまま、ツキヨミの顎を持つと無理矢理こっちを向かした。
「だから、俺が見れねぇのか。ツキヨミ!」
怯えた目、何かを訴えようと口が動くがすくんでいるのか、声がでない。
その表情によけい腹がたち、無理矢理唇を合わせる。
「・・・して、どうして副長さん。こんなことを・・・」
ツキヨミは泣いていた。そして、俯かずに俺を見た。泣き顔で。
違う、俺が求めていたのはそんな顔じゃない。俺が求めているのは太陽よりも眩しく月よりも優しい笑顔。
「くそっ・・・。」俺は、ツキヨミから離れた。

「なんでだろうなぁ」また、つぶやく。
思い通りに行かない事に対するじれったさ。目の前の愛しい女の先にいるのは俺じゃないとわかった失望感。
鬼の副長が聞いてあきれるな・・・。一人の女に狂うとは。

その後、ツキヨミと顔を合わすまもなく、忙しくなり、屯所を空けるとこが多くなった。
その方がいい、あいつと顔を合わさなくても声を聞くたび心が痛む。
あいつには、幸せになってほしい。だから、俺は・・・。
「・・・副長?副長、どうしました。」
「あ、あぁ、なんでもねぇ。」
仕事だ、仕事。切り替えなけりゃあな。俺は無理矢理考えを断ち切り仕事に没頭した。
                     TO BE CONTINUED(ツキヨミSideへ)


小説ブログの最初のタイトル「其の事ばかりを想って」
書くつもりではなかったのですが、タイトルを見た瞬間土方さんの後悔した顔が浮かんでしまい、話が始まりました。
本来は3部作で終わらせるつもりでしたが、オリジナルヒロインツキヨミは結構続きます。
今なら何ならツキヨミの過去まで考えるようになってしまいました。
ちなみに途中で、バットエンドになったりものすごい裏要素が出てきたりするので、
本筋と別にリンク張ります。・・・の予定です。特に裏要素はちょっと考えます。       11/11

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