欲望ーなんて結末ー

神楽がえいりあんはんたーになって2年がたった。
最初の頃は地球でも神楽のことはニュースになった。
真選組の隊服を着た若きエイリアンハンターの話だ。
刀と傘を振りかざしえいりあんに勇猛果敢に突っ込んでゆく神楽は頼もしかった。
そのニュースもあっという間に流れなくなった。
地球でもいろいろな変化が訪れた。
新八が眼鏡男子として大ブレイク、芸能界に進んでしまったのだ。
銀時は新八を解雇した。芸能活動と万事屋を両立したかった新八には
一方的な解雇だった。
神楽の手紙には銀時も新八もそのことには触れなかった。
神楽の「そっちはどうですか」と言う問いかけに「相変わらず」としか答えなかった。
真選組は増員し沖田や神楽のことも知らない人間が増えた。

えいりあんはんたーの二人は依頼を受けてとある星へ降り立った。
えいりあんは神楽一人でも十分なくらいだった。
「ありがとうございました、国王があなた方をもてなしたいとの事ですので、是非城に
きてはいただけませんでしょうか」
国王の招待ということで、無碍にも断れず、海坊主は承知した。
「神楽ちゃんも行くよ」
気乗りはしなかったのだが、後をついてゆくことにした。
「国民を代表して礼を言います。本当にありがとうございました。」
その男は深々とお辞儀をすると
「よかったら、今日はここに泊まるといい。ここには空き部屋無数にある。適当に用意させましょう」
「いえ、それは・・・」
「心ばかりのお礼です、是非」
「はあ、では・・・」
と、そこへ一人の男が通りかかった。
「お、ちょうどよかった、お前にも紹介しておこう。えいりあんはんたーの海坊主様と神楽様だ」
「かぐら・・・」
神楽は顔を上げてはっとした。顔かたちは違うにしろ、その王子の雰囲気はいつまでも忘れられない
あの人そのものだった。
「そ・・・」思わず出かけた名前を飲み込んで頭を振った。いる訳がない、あの人はもう・・・。
「この二人がこの国を救ってくれたのだ。」国王は続きを話し出していた。
「そうですか。それはありがとうございました。あなたたちのお陰でこの国は守られました。」
「当然のことをしたまでです」
「この方たちを今日はここにお泊めするから。食事はお前も来なさい」
「はい、父上」
と言うと「それでは、私はこれで失礼いたします。また、後ほど」と笑顔で去っていった。
その後、部屋に案内され、少しくつろぐと夕食の準備ができたと呼ばれた。
神楽は気がかりだった、あの王子の雰囲気・・・他の誰でもないあいつの気配がする。
でも、こんな所で、生き返ってるわけでもないだろう。
じゃあ、どうして・・・。

食事はそれは豪華なものだった。鉄の胃袋を持つ神楽にとっては嬉しい限りだったのだが、
食事どころではなかった。王子の一挙手一投足が気になってしまうのだ。
「お口にあいませんか」王子はにっこり微笑むと神楽に問いかけた。
「い、いえ・・・」ぎこちなく微笑み返すと無理やり食事を取った。
そのうちお酒が入っていい気分で飲んだくれている海坊主をよそに神楽は立ち上がった。
「おや、神楽ちゃんどうした。」
「疲れたみたいアル。部屋に戻るネ」
「そうか、ゆっくり休むんだよ」
「部屋までお送りしましょう」王子も同時に立ち上がる。
「一人で戻れるネ」と、その申し出を拒否した。その雰囲気に包まれたらあの頃を思い出して
悲しくなるだけだから。
「まぁ、そう言わずに」と神楽に近づくと、耳元で
「無駄な遠慮するなって言ってんだろィ、チャイナ」と言うと通り過ぎ振り返って黒い笑みを浮かべた。
「な・・・」その表情はその言葉遣いはその呼び方は。
全部を網羅している人なんて一人しか思いつかない。神楽はひどく混乱した。
「そ「さぁ、行きますか。神楽さん」王子はさわやかな笑顔で神楽を促した。
神楽は黙って王子についていった。二人で神楽の部屋の前まで来ると、王子は扉を開けて
「どうぞ、神楽さん」と部屋に入れて、自分も部屋に入った。
神楽は、王子を睨むと
「お前、何者ネ」と怒鳴った。
「何者・・・ねィ。最初から気づいてんだろィ。神楽」
「・・・総悟・・・」
「あたり」
と言うと、王子は神楽を抱きしめた。神楽は、王子を突き飛ばす。
「相変わらず、強いですねィ」
「・・・嘘ネ」神楽の目から涙がこぼれる。
「そんなわけないネ。総悟はもうずっとずっと前に・・・、それに全然総悟に見えないネ。」
「でも」王子は神楽に近づきながら
「俺の雰囲気は前のままだろィ」気づいてるんだろと王子は笑った。
「・・・どう・・して」
「俺の話を聞いてくれますかィ」と言うと王子は語りだした。
自分はずっと神楽のことばかりを見ていたこと、あきれた神様が病弱なこの星の王子として
生き返らせてくれたこと。でも、タイムリミットは5年だったこと。5年たって自分の願いがかなえられなければ、もう一度死んでしまうこと。
そして、今年がその5年目だったこと。
「様は、神楽のことを諦め切れなかった諦めの悪い俺を神様はもう一度生かしてくれたんでィ。
この星の王子はもともと長くはなかった。そこにあてがわれたんだ」
「じゃ、じゃあ本当に・・・」
「ああ、俺の服と俺の魂ををずっとそばにおいてくれてありがとな、神楽」
この菊一文字彼は、遺言で「刀は武士の魂」といっていた。
「まだ信じないのかィ。暴漢から助けてやったろィ。俺の墓の前で」
神楽は目を見開く。この話を知っているのは自分と・・・総悟だけだ。
住職はおろか銀時にも新八にも誰にも話していないのだ。
この話を知ってると言うことは・・・
「本当に・・・本当に総悟・・・。総悟アルか?」
「さっきから何回言わせるんでィ。俺は見かけこそ違うが沖田総悟だ」
「総悟!!」神楽は勢いよく沖田に抱きつく弾みで、ベットに倒れこんだ。
「さっきは突き飛ばしたのに、現金なお嬢だねィ」と言いながらも総悟は神楽を強く抱きしめた。
「総悟、総悟・・・ありがとう。戻ってきてくれてありがとう」神楽は胸元に頬を摺り寄せた。
「お礼を言うのはこっちだよ。俺はここの王子だし前の王子は体が弱かったからこの星から出れなかった。
お前が来なければ、俺は今年もう一度死ぬところだったんだよ。会えてよかった。」
「??」神楽は意味がわからずに首をかしげる
「俺の願いは、あんたと一生をともに過ごすことだ。結婚しよう神楽。」
「総悟・・・」神楽は返事の代わりに微笑んでキスをした。
少しの間、二人は言葉なくただ抱き合っていた。
「でも」口を開いたのは神楽だった。
「お前はこの国の王子なんダロ、アタシみたいな人間が結婚相手じゃまずくないのか」
「そんなこと」と言いながら神楽にでこピンをすると
「なんとでもしまさァ。この国でお前と結婚できないなら駆け落ちでも何でもしてやりまさァ」
「そうアルな、もう、絶対離れてやらないアル」
「それはこっちの科白だ、覚悟しなせィ」
二人は顔を見合わせて笑った。

翌日、二人はお互いの親に結婚の意志を伝えると、王様は喜び海坊主は猛反対した。
しかし、二人の思いの強さの前に最後は祝福した。
そして、式も無事に済み二人で、外交と言う名の新婚旅行に出かけることになった。
行き先はもちろん・・・。
「みんな、俺たちを見たらなんていうかねィ」
「ごっさ吃驚するアル」
「土方さん元気でやってるかなぁ」
「万事屋は廃業してないアルかな」
「楽しみですねィ」
「楽しみアル」
二人の目の前に青い星が近づいていた。

どうしても、どうしてもハッピーエンドにしたかったんですよね。
最初から、最終的に、沖田と再び出会うって話にしようとは思ってたんです。
とりあえず、こういう形にして見ました。
この頭に、書いてある、新八大ブレイクがスピンオフ話になります。
神楽がえいりあんはんたーになったその後の万事屋という話になります。
このページで最長の話になるでしょう。
ぐだぐだラストですいませんでした。読んでくれてありがとうございます。
                                             080630
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