欲望 ーそれは痛いほど突然にー


「もう、どれくらいになる」
「・・・次の月曜で3年だな。」
土方はそう銀時に告げるとタバコの煙を吐き出した。
「あいつ、まだここに通ってるのか」土方は前を見る。
「ああ」銀時は空を見上げた。

「チャイナ、ちょっと出かけませんかぃ」
「いきなりなにアルか」
「いいところ見つけたんでさァ。あんたが嫌ならいいけどねィ」
「・・・、行くネ」
さだはるに乗り沖田の道案内で進んだ先には綺麗な砂浜。綺麗な海。
「綺麗アル・・・ナ」
「俺のとっときでィ」
沖田は自慢げな顔をした。
やがて日が傾きだして、大きな夕日を二人で並んで見つめる。
沖田はそっと神楽を抱きしめて
「ずっとずっと好きだったんでさァ」
「いっ、いきなりなにアルか」
沖田は黙って神楽を抱きしめ続ける。
「・・・そのくらい知ってたアル」
というと、顔を真っ赤にさせて
「あたしも好き、アル」と小さな声で呟いた。
抱きしめられた腕の中で、ふと血のにおいがしたのを神楽は気のせいだと思った。
その3日後吐血をして沖田は床に伏せた。

「集まってもらって悪いな」
真選組の屯所に万事屋トリオを集めて苦い顔をして、土方は言った。
「珍しくまともなこと言っちゃってどうしたの大串君」
「土方だっつってんだろ」突っ込みもおざなりだ。
「実は、今日集まってもらったのは総悟のことだが・・・、あいつ、もう長いことないらしい」
土方は勤めて冷静に端的に述べた。
「お前らには伝えておいてほしいとあいつのたって願いでな。」
3人とも、声すら出せずにただただ呆然としている。
「・・・どうして」やっとのことで銀時が口を開く。
「肺の病だ。俺たちにもずっと隠してた。先日吐血してすべてが白日のもとになった」
「銀ちゃん、トケツってなにアルか」
神楽の顔は青くなっている、銀時は俯いて
「血を、吐いたって事だ・・・」
神楽ははっとした、あのときの匂いを思い出した。あれは、病に蝕まれ血を吐いたから・・・。
「マ、ヨラー、2人であたしを騙すつもりだロ。嫌な冗談言うなよ。総悟出てこいよ。そこで笑ってるんだロ」
というと、四方の襖を開けた。でも、そこに広がるのは闇ばかり。
土方は荒々しく襖を開ける神楽を黙ってみていた。
神楽は、土方につかみかかると
「あいつは、総悟はどこにいるアル!!」と土方に詰め寄った。
「あいつは、離れだ。あいつの病は感染する。あいつの希望で・・・」
言い切る前に、神楽は走り出した。
「おいっ!!聞いてんのか!!人にはうつるんだぞ!!」
「土方さん神楽ちゃんは・・・」
「あいつは、夜兎、だろ」
土方の肩を銀時がつかんだ。
「チャイナ娘、あいつ、天人だったな」
「で」というと、銀時は土方の肩をはなして、「沖田君はいつまで・・・」
「わからない、秋までもつのか・・・」
「そんなにひどいんですか!!」思わず新八は声を荒げた。
「総悟は、ずっと黙ってやがって一人で勝手に生き急いだんだよ。本当に馬鹿野郎だよ」
「お前!!何てこと言うんだよ」銀時は土方につかみかかる
「みんなを心配させまいと一人で戦ってたんだろ!!あいつはぁ!!」」
「・・・そうだよ」というと土方は苦しい顔をして
「それに気付けなかった俺は本当に馬鹿野郎だよ。気付いていたら無理にでも布団にくくりつけてやったってのに。
誰よりも若いあいつがどうして今・・・」土方の頬に涙が伝う。

「総悟!!」
離れについた神楽は沖田を呼ぶ。
「何でィ。少しは静かにできねぇのかィ」
沖田はいつもと変わらなかった。ただ、少し白くなった肌と隊服でないことを除けば。
「うつりますぜ」
「うつる訳ないダロ。人間の病なんて」
「ああ、あんた天人でしたねェ。まぁ、どっちでもいいんですがねィ。俺にとっちゃ宇宙でただ一人愛する人ですからねィ」
「・・・総悟」神楽の目からは大粒の涙がこぼれる。沖田はその涙を掬うと
「笑ってくだせぇ」と笑顔を作る。
「あんたにそんなしけた面はにあわねぇ。笑ってくだせぇ。まだまだくたばる気はねえでさァ」
神楽ははっとした、すぐに死ぬわけではないのだ。もしかしたら、治ることだって・・・
「総悟、あたしずっとずっと総悟のそばにいたいアル。一緒にいて看病するアル。あたしがそばにいれば治るかもしれないアル」
「あんたのことだから、断ったって聞かないんでしょうからねィ。好きにしなせい」

気まずい雰囲気が漂う中神楽は帰ってきた。
「銀ちゃん!あたし総悟の看病するアル」
「おまっ、急になに言ってるんだよ」
「お、おいチャイナ・・・」銀時も土方もこの言葉に狼狽した。
「看病したいアル。一緒にいたいアル。総悟もいいって言ったアル」神楽は強い決意の目をしていた。
「・・・ったく、いつの間にそんな仲になってたんだよ」
「門番には、俺から話をしておく。好きなときに出入りして来い」
「ありがとアル!!」
こうして、二人の長くて短い闘病生活が始まった。


連載です。4から5で話を終わらせる予定。
共通タイトル、欲望は曲のタイトル。この歌を聴いてこの話ができました。
元ユニコーンキーボード阿部義晴のソロデビュー曲。
なんとも重い歌詞なんです。多分別れた後の未練の歌のようなんだけど。
離れてしまった最愛の人を思って歌う歌と考えると、とてもあってた。
最後までは書いてませんが、うまくまとまるといいなぁ・・・。           080202

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