なによりも甘いひと時を・・・


「いってくるアル」
「気をつけるんだよ」と言うと新八は微笑んだ。
「あ、新八」と言うと、神楽は振り返って
「アタシ今日は昼ごはんいらないネ。」
「どうしたの神楽ちゃん」
「先月新八が持たせてくれたココアのお返しをたんまりもらってくるネ」
ああ、と言うと、意を得たように新八は笑って
「夕方には戻ってくるんだよ」
「もちろんアル」
いってくるアル、ともう一度言って、神楽は出て行ってしまった。
「しーんちゃん」神楽がいなくなると同時に銀時が新八に擦り寄ってきた。
「な、なんですか」もう新八は真っ赤な顔をしている。
「今日は一日二人っきりだねぇ」
「えっ?」
「神楽なりに気を使ってくれたんだろう。」銀時は鼻をかきながら言った。
「神楽ちゃん・・・なんだか悪いことしちゃいましたかねぇ」
「いいんだよ、こういう好意は素直に受け取っとこうや」
「銀さん」新八はふふっと笑いながら銀時を見つめた
「何だよ」
「照れてるんですか」
「なっ、なんだよやぶから棒に」
「鼻かいてばっかり。銀さん照れるとすぐ出ますよね。それ」というと、新八もまねをした。
「そ・・・、そりゃ、一日新ちゃんと二人きりなんて久しぶりだから・・・な」
「言われてみれば、そうかもしれないですね・・・」
気まずいような、甘いような空気が流れてしまった。
中学生かってくらい二人はお互いを無駄に意識してしまった。
「「あのっ・・・」」
「新八から言えよ」
「いや、銀さんどうぞ」
と、押し問答を続けた後、じゃんけんで銀時から話すことになった。
「新ちゃん、これ」と、包みを出した。
「なんですか」
「今日はホワイトデーだろ。新ちゃんへと思って買ってきた。」
開けるとそこには、綺麗な銀色の財布と飴。
大きくなく、手になじむ財布。銀時の髪の毛と同じ綺麗な銀色。
「わあ・・・、いいんですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます。大事にします」
「飴もあるんだよ」おまけ程度だけどな、というと銀時は笑った。
「一つずつ食べましょう。銀さん」
「ああ。そうだ、新八食べさせてやるから、目ぇ瞑ってよ」
えっ、と新八は声を上げたものの、銀時はやる気満々のため、仕方なく目を瞑った。
すると、口に暖かい感触と、甘い固体。
「っ・・・/////」
「おいしい?」銀時は何食わぬ顔で聞いてくる。
「・・・おいしいです」新八は真っ赤になりながらそれだけ言った。
「神楽が戻らない分。今日くらいはいちゃいちゃしようぜ。バレンタインの時は仕事が入ってこんなことできなかったんだしな。」
「はいはい」しょうがないですねぇと言いながら、新八は嬉しそうに笑った。


「おい、サド。昼飯おごれよ」
いきなり、神楽は沖田に言った。
「なんでィ、いきなり」
「うちのラブラブバカップルの手前、やせ我慢して、今日は昼ごはんいらないって言ってきたネ。だから、帰ることができないネ。」
ちょっと、寂しそうな顔をした神楽を見て、沖田は
「まったく、しょうがないお嬢だねィ」
というと、神楽の頭をなでた。
「総悟・・・」
「大好きな旦那と新八君のために一肌脱いだ神楽はえらいですぜ」
「でも、寂しいアル。アタシ・・・邪魔者アルか」
「なにいってんでィ」というと、神楽のおでこにでこピンをした。
「旦那と新八君と神楽3人そろって万事屋じゃねぇですか。二人とも神楽のことも大好きですぜ」
「マジでカ!?」
「もちろんでさァ」それに、と沖田は付け加えると
「もし、本当に邪魔者扱いされるんなら、俺んとこに来なせィ。俺が嫁にもらってやらァ」
「・・・総悟。お前・・・」
「なんですかィ」
「恥ずかしいやつアルな」
「何とでもいいなせィ」と言いながら、二人とも笑顔になった。
「さてっと、昼は何が食べたいんですかィ」
「そう、ご・・・?」
「昼飯おごれって言ったのは、どこの誰ですかィ。まったく困ったお嬢だねィ」
「おごってくれるアルか」
「先月のココアのお礼も兼ねて、ですがねィ」
「じゃあ、総悟が食べたいものでいいアル」
「俺が食べたいもの・・・」神楽が食べたいと言うのをすんでの所で押しとどめると
「そば・・・ですかねィ」
「そば食べよう、総悟」
「はいはい」そうだと言うと、沖田は神楽に包みを渡した。
「なにあるカ」神楽はきょとんとしている
「まぁ、いいから開けなせィ」素直に包みを解くと、持ち運びできる写真いれが出てきた。
「あんたも親元はなれてんだから、大事な写真がくちゃくちゃにならないように、それにいれなせィ」
4枚くらいなら入りまさァ、と沖田は笑った。
「じゃあ、後で写真撮りに行かないとだめアルな。」
というと、神楽は沖田に
「先にそばアル。その後で、写真撮りに行くある。」
そして、これにいれるアル、と神楽は意気揚々と歩き出した。
この言葉に、沖田が照れて
「まったく、現金なお嬢だねィ」
と言いながら、嬉しそうな神楽の後を追った。


「副長いい加減にご飯食べてくださいよ」
「あ?なんだもうそんな時間か」
切がいい所まで、と思ってたんだが、と言いつつ頭をかいた。
「副長の分運んできましたから、ここで食べますよね。」
「悪いな」と言うと、遅い夕飯を食べだした。
「根詰めすぎると体に毒ですよ。あなたは真選組の要なんですから、もっと体調管理もしっかりしてくださいよ。」
というと、山崎はむくれた。
「すまないな、いつも」と短く言うと、ご飯を食べ続けた。
わかってはいても熱中すると周りも時間もわからなくなる性分故つい根詰めて仕事してしまう。
しかも今日は・・・、
「山崎」
「はいよ」
「これ」と言うと、クッキーを差し出した。
「なんですか」
「先月のチョコレートのお返し」ここのうまいらしいぞ、と言うと、膳の上に置いた。
山崎は、土方がクッキーを買ってる姿を想像するとおもしろくて嬉しくなって微笑んだ。
「ありがとうございます、さっそく・・・」と手を伸ばすと、土方はそれを取り上げた。
「!?何でですか、副長」山崎が困惑していると土方はさっさと袋を開け
「ほら」と、一つ手にとって渡してきた
「あ、ありがとうございます」と、手を差し出した瞬間
「ちげぇだろ、口開けろや。山崎」と土方はもどかしげにした。
「え・・・」山崎の思考回路はパンクしたらしく、止まってしまった。
そんな山崎に気づいたのか気づかないのか、土方は
「ほら山崎、あーん」なんていいだした。
山崎は、自分でも気づかないうちに口をあけていた。
土方は山崎の口にクッキーを入れると
「うまいか?」と微笑んだ。
「・・・・とても」といいながら、山崎は、中途半端に入ってるクッキーを俯いて食べた。
「まだまだあるからな」
「もしかしてそれ全部・・・」
「俺が食わしてやる」土方はあっさり言いはなった。
「えっと・・・、俺夕飯食ったばかりなんですが」
「そうか、じゃあ、後1枚くらい食ってけよ、ほら」口を開けろとばかりに
差し出されたクッキーに満面に恥ずかしさをこめて山崎は口を開けた。


バレンタインのアンサー、ホワイトデイ。
順繰りに下がった形になるのかもしれないですね。なんとなく、沖楽が昼って言うのはできていたのですが、
土山を朝にするとしっくり来なかった。それで、この並びになりました。
銀新夜だと、神楽ちゃんいるしねぇ。思ったよりまとまってよかったかもしれない。
夜の土山食べさせてあげるは微妙に実話です。といっても、忘年会のビンゴであたった
んまい棒を面白半分で食べさせられてたって言うなんとも色気も何にも無い話なんですが。
それと、お昼、沖田さんが食べたいといったそば。あなたのそばと引っ掛けてます。
まぁ、甘い一時なんでそれもありかなぁ、なんて。
                                                     080309
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