奇跡のような少年


どうしてかねぇ。
俺は、隣で働くけなげな少年を見た。
今日は、久しぶりに割のいい依頼が入った。
楽で、依頼料は多い。
それを断ろうとしたとき、この少年は異常に怒った。
「こんな仕事、そうめったに来るものじゃないんですから!!なに断ろうとしてんですか」
俺は、面倒くさそうにしょうがなくこの依頼を受けた。

確かに、いつもだったら、こんないい仕事ほおって置くわけがないのだが、
よりによって、今日、そんな依頼が来るかねぇ。
本来なら臨時休業に位するつもりだったのに、こいつはわからないといった顔をして、
「銀さんなんかあるんですか?」
といってくるものだから、理由を言うに言えず、こういうことになってしまった。

1日せっせと働いて、終わった頃には日も暮れて、その足で夕食の買出しへ。
「じゃあ、今日は姉御と語り合うからダメガネはこっちくんなヨ〜」
神楽はさっさと新八の家へと定春をつれて走ってしまった。
あいつなりの配慮かもしれない。

「ということで、銀さん。僕は今日万事屋に泊まりですから」
アイツはいつも通りといわんばかりに万事屋へ向かう。
「今日は、新ちゃんが泊まりなら、銀さん夕食腕を振るっちゃうよ」
「楽しみにしておきますよ」
長い付き合いの夫婦の会話というかなんと言うか・・・。
でも、分かり合ってるというのを形にするなら、こんなことかもしれないなぁ。
お互いを信頼して、受け入れあって、だから、こんな短い会話ですむ。
説明をしなくていい関係というのはこんなにも優しいのか。
改めて、くすぐったい気持ちになる。

そう、アイツから、俺たちはもらってばっかり。
惜しみない愛とか、分かり合おうと思う気持ちとか。
怒ったり怒られたり、それが悲しかったり苦しかったり。
隣にいないと、何かが足りないと思ったり。
戦いの中で培われるものとは違う、穏やかで優しい光。
陽だまりのような、この少年と出会ってこうやってやり取りが出来ること自体が、
こいつが生まれて俺たちのような荒くれ者と出会って、今日まで一緒にいる、これってある意味
「奇跡だよな」
「?なにがですか」
「え?」
「奇跡だって言ってましたけど」
「俺そんなこと言ってた?!」
「・・・もう、耄碌ですか。」
「なに言ってんだよ。男は30からがいいんだよ」
「はいはい」
考え事が駄々漏れしてる・・・。耄碌・・・じゃないよな。
と、とにかく、そんな奇跡のような少年は、どうしてこんな自分に厳しくなってるんだろう。
お妙に甘えっきりだった少年時代を戒めるかのように、アイツは俺たちに甘えない。
むしろ、俺たちが新八を頼りっきりだ。
・・・、それも原因か。
だったら、今日はうんと甘えさせよう。
俺のほうが人生経験長いんだし、そのくらい何とかなるだろう。
万事屋について、夕飯食ったら、ちょっと新ちゃんと甘い時間でも過ごそうか。
おめでとう、とか言ってやろうかなあ。なんだか、うきうきしてきた。

食事も終わり、アイツは先に風呂に入った。
甘やかしてやりたいのに、ものすごく緊張している自分がいる。
告白だってして、抱擁だってキスだってそれ以上だってしているのに何でいまさら緊張しているんだろう。
そんな事ぐるぐる考えていたら、あいつは出てきた。
「銀さん、つぎいいです・・・」
何も言わずに、あいつを抱きしめた。
「こんなときぐらい、もうちょっと甘えろよ」誕生日おめでとう。
耳元で囁くと、新八は、真っ赤になった。
「・・・覚えていてくれたんですね。」
「忘れるわけがねぇだろう。本当なら休みにしてやったのに」
そして、おまえんちに神楽と押しかけて誕生日祝おうとしたのに。とぼやくと、
「僕にとって、こうやって銀さんと神楽ちゃんとみんなで過ごせる毎日が一番の幸せですから」
と、天使の笑顔で微笑んだ。
「お前は本当に欲がねーな」といいながら、抱きしめる腕を強くすると
「でも、たまには俺たちにも頼れよ。一人で抱えるなよ。俺たちはお前の味方だ。」
アイツは、泣きそうになりながら
「ありがとうございます、銀さん。その言葉が何よりのプレゼントです。」
と、言うと俺に抱きついた。泣き顔を見られたくなかったのだろう、その手は震えてた。
しばらく言葉もなく、抱きしめあっていたが、
「今日は、疲れてもう眠てーだろ。銀さん風呂入ってくるから、お前は先寝てていいぞ」
「あ・・・、待ってますよ」
「?」あきらかにアイツは眠たそうだが、と思ってみていたら
「一人っきりで眠るのは嫌ですから」だから、早く出てきてくださいね。とはにかんだ。
俺はアイツの頭をぐしゃっと撫でると
「すぐ出てきてやるよ一緒に眠ろう」といって、風呂場へ急いだ。
いつもを幸せと思える、それはあいつのいいところ。
いつも、なんてものは、明日にも明後日も未来永劫続いている様にみえて、
実は、急になくなるような脆いもの、ということをあいつは知っている。
それだけ、多くのことをあの小さな体は経験してしまってるんだ。
「もうちょっと甲斐性のある人間にならないとな」
風呂の中でぽつっと呟いた。

居間に戻ると、アイツはうとうとしていた。
「新ちゃん、大丈夫か」
「あ、お風呂終りましたか」アイツは夢うつつといった所だろうか。
俺は、アイツを横抱きにして、チュっと触れるだけのキスをした。
「ど、どうしたんですか、急に!!」
突然のことに、目も覚めたらしい。
「んー、新ちゃん動けなさそうだから、俺が布団まで連れてってあげる」
今日くらいは、甘えなさいよ、というと
「・・・今日だけ、ですか?」
と、俺を見つめていった。ってか、その顔!!反則もいいところだろう。
大きな目はちょっと潤んで眠たい表情はまたそそる・・・。
「いつでも!!もちろん、新ちゃんが甘えたいときは甘えな。俺はいつでも
新ちゃんの望むようにしてあげるよ」
「ありがとう銀さん」というと、あいつは、俺の首に腕を回して、俺の頬にキスをした。
えっ、これって今日はがんばってのサインか?!
と思ってたら、腕の中で、規則正しい寝息が聞こえた。様は、寝ぼけていたんだろう。
「はは・・・、そうだよな・・・。」
がっかりしたような、なんというか・・・。
とにかく、アイツを布団に寝かせると、俺は、アイツを抱きしめて眠った。

翌日、アイツの家に、神楽を迎えに行ったら
「誕生日おめでとーアル!!新八」
「新ちゃん、お誕生日おめでとう」
と、二人が作ってくれた、かわいそうなケーキを何とか食べた。
でも、アイツが嬉しそうだから、まぁ、いっか。
その帰り道、俺と神楽は、新八の両側にたって
「一日遅れたけど」
「プレゼントアル」
というと、ありったけの気持ちを込めて、あいつの頬にキスをした。

「ありがとう、銀さん。神楽ちゃん。最高のプレゼントだよ」


新八誕生日祝いです。
しかし、誕生日を祝うには遅すぎた・・・。
ホームページは親不知だから、こっそり更新しないといけないので、
全然できないままになってしまいました。
ブログでは、早めにお祝いしたんですけどね。
なんだかんだ、みんな新八が大好きって事で、書いてみました。
特に、銀さんが、新ちゃん大好きな感じが出てればなぁ・・・。     080818

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