恋路ロマネスク


きっとあの人は俺なんか目の端にも捕らえてはもらえてないんだ。きっと・・・。

ずっと同じところで働いていて、少しは信頼感も持ってもらえてたと思ってた。
俺とは、仲良くしてくれているんだと思ってた。
俺には他の人とは別の想いを持ってくれているようにも思っていた。
あの時までは・・・。

桂と言う爆弾魔をおって池田屋に行った時、あの人は出会ってしまった。
自分の芯を揺らすほどの人物に。
銀色の髪を揺らして逃げていく男にあの人は刀で切りかかり、
その後、局長の敵を討つために刀で切りかかった相手。
最初こそ、殺したいほどの憎しみのみを湛えていたのに
そのうちに、その想いは別の方向に変わっていった。
誰と一緒にいても、その人に出会えばお互いが歩み寄り喧嘩するだけ喧嘩して戻ってゆく。
あの人にだけでなく、銀髪の人間にとってもあの人は特別な感情を持っているようだ。
俺はたまたま一緒に市中の見回りをしていたときに銀髪と出会ってしまって、そのことを知らされた。
戻ってきた、あの人は悪態をつきながらもその人の話ししかしなくなった。
引き合う赤い糸のように彼らはお互いを見つけると必ず引き合い喧嘩して戻る。
それを見るだけで、悲しくなる。きっと、俺にではなくあの二人の間に強い糸が張られている。
自分は、それを見ることしかできない。
「仲、いいんですね。旦那と」
俺が、あの人にそういうと、躍起になって怒った。そして必ず最後に
「似てる二人は喧嘩するんだよ」とだけ言った。
似てるの認めてる時点で、かなりいろいろなものを信頼してるんじゃないですか。
思った言葉を一生懸命飲み込んだ。

俺には、あの人に続く赤い糸は持ってない。俺にあるのは二人の仲を嫉妬して悲しんで、
それを一番近くで見なければならない、蒼い糸。
あの時、二人が池田屋で出会わなければ、俺はこんなに胸を痛めることもなかったんだろう。
でも、導いたのは密偵の俺。でも、こんなために導いたわけじゃない。
いっそのこと、あの人の銀髪への想いが露呈して、だめになればいいのに。
そうすれば、俺はあの人を慰めて、あの人の心の中に入り込むことができるのに。
そう思うたびに、自分の醜い想いに胸を潰した。
全部自分の勝手な想いなのに。
自分で勝手に恋をして、勝手にあの人の求めてる人がわかって、勝手に傷ついてるだけ。
そんな醜い想いに嫌気が差して、配置転換とか、辞表を出すとかいろいろ考えた。
でも、自分は監察以外に何ができる、そう思うとそれすらもかなわなかった。

ある時、風の噂に聞いた、あの人の想いは実ってしまったと言うことを。
あの人はたまに嬉しそうな顔をするようになった。
それを見るたび俺の心は悲しくなる。
やっぱりあの二人には強い糸がはっていたのだと、俺みたいな悲しみを湛える蒼い糸にはない
確かな強さがあったのだと。
「よかったですね」とあの人に一言だけ言うと。
「何のことだ」と、あの人は訝しげに言った。
別に、隠さなくてもいいのになぁ・・・。
そうやって、隠されると僕の蒼い糸がどんどんはじかれてどんどん僕の気持ちに痣ができていく。

「と言うことで、旦那、死んでくれませんか」
「・・・」
わかってるんですよ、それでも旦那にはかなわないこと、旦那が傷ついて悲しむのはあの人だって事
俺が傷つけたとは旦那は絶対あの人に言わないこと。
だから、旦那は刀をよけなかったし、俺は旦那に刀を当てなかった。自分の幸せよりもあの人の幸せを
最後の最後で俺は願ってしまった。
大きく空振って、俺はそのまま蹲った。
勝手に出てくる涙、勝手に出てくる嗚咽、勝手に震える体。
「悪いな」
旦那は一言だけ残して、そこから去った。

「お前・・・」
「何です」
「・・・いや」
あの人から、それだけ言われた。きっと旦那は何かをあの人に話したのだろう。
仕方がないこともわかっていながら、俺の胸の中の痣はまだ残っている。


久しぶりに曲から書きました。はまった俗さよなら絶望先生の1月のエンディング。
歌詞を見たら、ものすごく切ない悲恋の歌詞なので、ついつい退ちゃんメインで
考えてしまいました。
切ないのは絶望先生だからかもしれないですが。
でも、ものすごくいい歌詞ですよ、思わずCDが欲しくなります。
見つけたら絶対買おう。
                                          20080330
戻る 銀魂TOPへ TOPへ