憎まれ口を叩いても

いつもの公園、いつものチャイナ、いつものからかい、いつもの喧嘩。
それが毎日だった、それが続くと思ってた。
いつの頃からだったろう、チャイナが俺に何回か話すことがあった。誰かにつけられている様な気がすると。
俺は特別警察の切り込み隊長、攘夷志士い狙われてもおかしくはない。そして、身近なものが同じような危険にさらされることも。
でも、口をついて出た言葉は
「こんなじゃじゃ馬のどこがいいんでしょうねィ、そのストーカーは」
といった、ひねくれたものだった。
「ふん、警察が当てにならないことくらい100も承知ネ。自分の身くらい自分で守るアル」
そのたびに、不安そうな顔をしながらもあいつも憎まれ口を返してきた。
そして、この少女は夜兎だ。地球の人間で互角にやりあえるのは自分だけだと思っている。
そのはずだったのだが・・・。

「沖田隊長!!」
1番隊のやつが血相変えて走ってきた。
「何でィ、そうぞうしい」
「そんな悠長なこと言ってられないんですよ」
というと、1通の手紙を渡してきた。その内容は・・・。
幕府の狗どもへ
1番隊切り込み隊長沖田総悟の大事なものを預かった。
返してほしかったら一人でここへ来い。
という文章と地図だった。
俺は無我夢中で走った。大事なものなんてひとつしかない、でも、どうして、あいつが攘夷志士にやられてるんだ。
とにかく理由は本人に聞こう、そう思って、指定されている場所に急ぐ。
そこにつくと案の定『大事なもの』があった。
「そーご!!!」
チャイナの顔は青痣ができていて、手首足首は縛られていた。
「お前ら、こんなことしてただじゃすまさねえ」
「おもしろい、こちらには人質がいるのに、何ができますか」
志士どもは、いやな笑みを浮かべている。
「馬鹿チャイナ、お前なんでこんなやつらに捕まってんでぃ」
あいつは答えない、以前のように腕一本やられているならわかるとしても、今回はそういう理由ではなさそうだ。
じゃあ、どうして・・・。
「沖田総悟をわれらが粛清する。助けたくばついて来いといったら大人しくついて来たよ。馬鹿な娘だ」
「なっ・・・!!」
つまりチャイナは俺のために、のこのこつかまりに行ったてのか。
「お前がこんなやつにつかまるわけない。わかってたネ。でも、もし本当だったらあたしは迷わず助けるネ」
だから、というと
「お前が無事でよかった」あいつは笑顔だった。
「うるさい、小娘!!」そんなあいつを志士は殴った。神楽の青痣が増えていく。
同時に、俺の中で何かがはじける音がした。
「おめえら、それが俺の命よりも大事なものと知って勾引かしたんだな」
冷静な言葉そして、強い殺気。相手にも気付いているのだろう、どれだけ大事な娘かということ。
「貴様を殺るためなら、手段は選ばぬ。お前のいない真選組などとるに足らぬわ!!」
「馬鹿なこと言うねぃ。俺がいなくともうちには鬼の副長がいますからねぃ。お前らみたいな小物に負けるわけねぇだろうが!!」
叫ぶと志士どもに襲い掛かった。

総悟は叫ぶと敵に襲い掛かった。それは、あたしたち夜兎よりもすばやくそして・・・、強い。
理性を失っているのだろう、あいつは獣さながら。
瞳孔を開き次から次へ敵を捕らえては瞬時に倒してゆく。
でも、人数が違いすぎる、前の敵に捕らわれすぎて後ろの敵に気付かない。
「危ない!!」
叫ぶと体当たりをして、敵を倒した。しかし、そのときに敵に盾になるようにつかまってしまった。

「なんで、こいつらの言うことに従ってるんでぃ。いつもの威勢はどうした、神楽!!」
「なんだか、力が出ないネ。思うように身体が動かないアル」
痣のできた顔を苦痛にゆがめるあいつが痛々しかった。
「こいつは特殊でな、人の力を弱める力のある縄なんだよ。天人様様だな」
どうりで、さっきから何もしなかったってぇわけか。
「これ以上、暴れるようならこいつを切る」
先に神楽を助けるべきだった。頭に血が上ったのが災いした。神楽を盾に取られては・・・。
「なにやってるアル!!お前はそんな弱虫か。あたしと戦えるほどの力を持ってるだろう!!」
「黙れ!!」殴られると気を失った。
「お前ら、それ以上汚い手で神楽に触るな。これ以上したら・・・、本気で殺しに行く」
低い低い声に相手が怯んだ隙を逃さなかった。神楽をつかんでるやつに瞬時に近づくと腕を切り落とし神楽を奪い取った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
吹き出る血、もちろん返り血を浴びたがそんなもの関係ない。
ここまで、神楽にしたんだ、腕の1本で感謝してほしいもんだ。
「次は誰でぃ」
鋭く志士どもを射抜く。すくんだ志士どもに襲いかかろうとしたとき
「総悟!!」
聞きなれた声がした、
「土方さん。こいつら殺っていいですね。俺の神楽をこんなにさせたんだ。殺しますね」
「やめろ、瞳孔開いてるぞ」
「俺の命より大事なものをこんなにしたんですよ。万死に値しますよ。こんなくず」
といった俺に、土方さんの平手が飛んだ。
「チャイナ娘は生きてる。そんなことをして一番悲しむのはチャイナ娘だって事、気付かねぇのか」
「なぜ・・・ですかぃ」
「そんな野郎を殺して、お前が人斬りと揶揄されるのを悲しむのはチャイナ娘だってことだよ」
人のうわさは尾ひれはひれがついて広まってしまう。その陰口を聞いて一番悲しむのはあいつ・・・ってことか。
俺は、刀をしまうと、
「俺の刀のさびにするのも惜しいくらいのちんけなやつらですからねぇ。やめときまさぁ」
と言うと、隊のやつに身柄を渡した。
「神楽!!」
理性が戻った俺は気を失った神楽に駆け寄った。
「神楽、神楽!!しっかりしなせぃ」
縄を解き、その身体を抱き上げる。
俺のせいでこいつをこんな目にあわせちまった。俺がそばにいたばっかりに・・・。
「ごめん、ごめん神楽。痛かったろうに、つらかったろうに・・・。ごめん」
「んっ・・・」
神楽の気がついたようだ。俺を見上げると頬に手を当てた。
「どうして泣いてるアル。そーご・・・、どこか痛いアルか」
知らぬ間に、涙が流れていたようだ。
「泣いてなんか・・・、疲れたんで汗でもかいたんでしょう」
「意地っ張りアル」
笑うあいつを抱きしめて、
「すまねぇ、神楽」
「悪いことなんかないアル。お前が無事ならいいアル」
そういって微笑むとあいつはまた気を失った。それが合図のように、俺もそのまま意識に突き放されてしまった。

気がつくと、病院のベットの上。隣にはあいつが寝ていた。
俺は、これといった外傷がないのでそのまま着替えて病室を後にした。
「沖田君・・・」
外には旦那とメガネがいた。
「旦那、新八君。本当にすまなかった。もう、二度と神楽にはあわねぇんで許してくだせィ。」
というと、旦那達の呼び止めも聞かずに走り出していた。
逢わない方がいい、俺と逢っていたばっかりに変なやつらに絡まれちまう。
だったら、逢わなければもう、そういったこともなくなるだろう。これでいいんだ、これで・・・。
そうやって、2週間が過ぎた、神楽もそうでかい怪我があったわけではなく、すぐに退院したと風の噂で聞いた。
何度か屯所にも顔を出したみたいなんだけど、全部居留守を使った。
顔を見たらもう引き返せなくなる。あいつのためにもこれでいいんだと、何度も何度も繰り返した。
そんなある日、近藤さんに呼ばれた。
「お前に直々の仕事がある。護衛を頼みたいと依頼があった。それに行ってほしい」
どうして俺がと思ったが近藤さんの依頼ならと、その依頼を受けた。
「で、誰の依頼なんでィ」
「ああ、ちょっとした有名人の娘さんでな、何でも最近襲われたらしい。で、1日護衛して敵さんの尻尾をつかんでほしい」
「わかりやした、で、その娘さんはどちらにいるんでぃ」
「客間に通してある。頼んだぞ」
客間に向かうと、紺色のワンピースにピンクの髪を下ろした女性が所在無げに座っていた。
「はじめまして、本日一日護衛させていただきます。沖田総悟と申します」
恭しく頭を下げるとその女性は振り向いて
「総悟」と優しく声をかけられた。
その声にはっとして顔を上げるそこには微笑む神楽がいた。
「どうして・・・おまえ・・・。」
「こうでもしないと逢えないと思ったネ。逢いたかった、総悟・・・」
事の次第はこうだった。毎日のように屯所の前まで来て帰っていた神楽に気付いた旦那が土方さんに相談してこの案を思いついた。
で、土方さんに命を受けるよりも近藤さんに命を受けたほうが訝しがらないだろうと言う事で近藤さんにも一枚かんでもらったと。
「有名人の娘って・・・」
「一応パピーは海坊主ね。有名だろ」
そうだった、こいつの親父はあのえいりあんハンターだったか。
「どうして逢ってもくれないネ。あんなちんけなやつらに捕まるやつは願いさげってことカ?」
苦しい顔して神楽は俺に聞いてきた。結局お前を苦しませるのは悲しませるのは俺・・・。
「違いまさぁ」
「じゃあ、どうして・・・」
言葉にできない想いが涙になる。泣かないでほしい。きれいな顔を歪めないでほしい。
俺は、神楽の涙を拭うと
「この間の一件、あれは、俺とお前が毎日のように喧嘩していたのが原因でお前が匂引かされた」
だから、と言葉を続けると
「もう、二度とお前に危ない目にあってほしくないんでィ。そのために俺は・・・」
「大丈夫アル。だって、危ない目にあってもお前すぐに助けてくれるアル。」
神楽は笑顔でそういうと、また悲しい顔をして
「だから、避けないでほしいネ。それが何よりも悲しいネ。」
言われて、胸が痛む。でも、俺のせいであんな目に・・・。
「でも、おれは、お前を危ない目にばかりあわせてしまう。俺よりも幸せに暮らせる男を選びなせィ・・・」
顔を背けなければ、言えなかった。神楽の顔を見ては言えなかった。
「・・・本心か?」答えない俺にさらに続ける。
「総悟、それで後悔しないアルか?お前の命より大切なあたしがほかの人と結婚してもいいアルか?」
ああ、土方さんの気持ちが今ならわかる。どうして姉上を拒絶したのか。こんな気持ちだったのか。
でも、俺は・・・。
「・・・やだ、いやだ。言いわけねえだろ。お前を他の奴にくれてやることなんていいわけないんでさァ!!」
気持ちの高ぶりが治まらず、俺は神楽を強く強く抱きしめた。
「あたしだって総悟じゃなきゃヤーヨ。大丈夫、あたしは強い、それにあたしたち二人なら誰にも負けないアル」
「ああ」
「もう避けるなよ」
「もちろんでさァ」
誰にも渡さない、もう離さない。俺の命よりも価値のある大切な女だ。
「さて、今日1日付き合ってもらうアル」
「それは、口実じゃないのかィ」
「ゴリが、あたしを苦しめたお詫びに一日くらい付き合わせてやるって。だから今日の総悟の仕事はあたしと一緒にいることアル」
「なっ・・・」
近藤さんはさすがですねィ。現役で恋をしている人は違うや。
「ということで、あたしを1日護衛するヨロシ」
「いやでさァ」
「なんで!!」神楽は驚きと悲しみが混ざったような顔をした。
「1日でいいのかぃ。神楽。俺は、一生かけてお前を護衛したいけどねィ」
「・・・馬鹿総悟!!」
「なんで」
「びっくりしたアル。ここまで言っておきながらやっぱり身を引くとかいわれると思ったアル」
「まぁ、それがサディスティック星の王子たるゆえんですかねィ」
「馬鹿総悟、お詫びに今日1日何かおごれよ」
「はいはい」
ちょっとむくれる神楽に、
「神楽、俺は天邪鬼だからこんな風にしか言えねぇけど・・・。お前のこと一生かけて守らせなせィ」
「・・・!!し、しょうがないアル。護らせてやってもいいアルよ。」
「お前も天邪鬼だな」
「お互い様アル」
顔を見合わせて笑いあうと、
「どこに行きたいんでさァ。好きなとこつれてってやるよ。お嬢様」
「マジでカ。とりあえず、団子のうまい店につれてけよ。」
「口の悪い、お嬢様だねィ」
「煩い!!とっとと案内するヨロシ」
「はいはい、やっぱりこうでないとな」
「もちろんアル」

どちらともなく手をつないで、二人は屯所を出て行った。
もうはなさないと、身体で表現するように。


壁紙に毎度毎度悩みます。もう、無地でもいいかなぁ。色合いさえ何とかなればいいだろうか。
絵がかけないときこういうときに不利ですね。
これは、ブログより先にあげてみました。こういうことするとブログにあげるの忘れるんですよね。
ブログがないと、携帯で確認する事ができないので、なんとなく辞めてません。
誤字脱字とか結構携帯の方が見つかります。気をつけないとなぁ・・・。辞書の電池かえとこ。     1/5

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