虚勢の中の本心

「どうして、髪切ったんですカィ」
「あー、まぁなんとなくだ」
土方コノヤローは特にどうした風でもなくいった。
真選組ができて程なく土方さんは髪を切ってしまった。
男とは思えないくらい綺麗で長い黒髪。
昔だったら、本当に女とも間違えかねないくらい、それくらいのものだった。
「その髪で、いずれ禿るだろう土方さんのカツラ作ってやったのに」
「んだと、コラ。いつ禿るって言ったよ」
口調と裏腹に土方さんは少しぼんやりしていた。
「土方さんもしかして、髪を切った理由・・・」
俺はうっすらと気付いていた。その長い髪昔から切りたがっていた。
切らなかった理由はただ一つ。
「んだよ」
押し黙った俺を土方さんは不思議そうに見つめる。
「姉上を・・・、忘れるためですかィ」
肩がぴくっと揺れた。
姉上が大好きだった、黒髪。切ろうかという土方さんを勿体無いと何度となく止めたのは姉上。
少しの沈黙。本当に少しだったのか、ものすごく長かったのか俺にはわからない。
でも、その後土方さんは
「そんな、女みてぇな事するわけねぇだろ」
と、悲しく笑った。
「髪が長いと、戦う時に不利だしな。だから、切ったんだよ」
こう続けられても、言い訳以外の何にも聞こえない。
「あんた、バカですねィ」
「何で急にそうなるんだよ」
そんな風に取り繕おうとするほど本心が露呈するのがわからないなんて。
そんなに、人の幸せばかりを祈らなくてもいいのに。
「しょうがないから、あんたの幸せは俺が祈ってあげまさぁ」
「・・・どうした、熱でもあるのか」
「そうかもしれませんねェ」
俺は言いながら土方さんの前に出る。
俺が早く平和な世の中を作らないと姉上と土方さんが幸せになれない。
誰も傷つかず凶悪な毎日を早く消さないと。
俺は何かにせかされるように走り出してた。遠くに驚く土方さんの声を聞きながら。


なんとなく、銀魂16巻のミツバさんと土方さんが話してるカットを見ながら思いついてしまいした。
惚れた女がその髪を綺麗だといったから、もうこの髪が切れない。
刀にしか生きない分恋愛は奥手でいてほしい、不器用でいてほしい、と思って書いてみました。
沖田さんは、お互いがお互いに惚れてるのをしってて手を引いた土方さんを歯がゆく感じてるんでしょうね。
で、走り出したい衝動に駆られてそのまま走り出してしまう。そんな感じが出てるといいんですが。
衝動で、書いてしまったというのが本心なんです。       11/10

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