一番のプレゼント

12月、猫の手さえ借りたいくらいの忙しい時期。珍しく万事屋にも以来が殺到していて
手分けして、仕事にでる事も多くなっていた。もちろん収入もいつもの何倍も入った。
「銀さん、今月は給料弾んでくださいよ」
「銀ちゃん、くれなかったら働かないアル。」
二人の要求ももっともだと思いながら
「わかったから、今日も働くぞ」とやる気なさそうに言った。
クリスマス、今年の銀時にはいつも以上に意味があった。
新八に告白をしようと考えているのだ。結果はどうあれ、クリスマスの日に告白して、白黒はっきりさせたかった。

とは言えど、どうしたもんかねぇ。
いつも進んで恋愛関係を発展させた事がない銀時にはこういうときにどうしていいかわからない。
オマケにもてない。よけいに、どうしたらいいのか。そして、クリスマスの日新八は万事屋にくるのか?
堂々巡りを繰り返していた。
とりあえず、と思い、新八と神楽に声をかける。
「なぁ、お前らクリスマスどうしてんの?」
「あたしと定春は予定アルネ」「ワン!!」
神楽は彼氏の沖田君と泊まりでデート、定春はメルちゃんのクリスマスパーティ、これも泊まり。
「新八は?」
「僕は・・・、特にまだ決めてませんけど」
二人(正確には一人と一匹)に予定があるので、いろいろ気が引けて新八は声が小さくなる。
「ふーん」
「どうしてそんなこと聞くんです?」
「仕事はいりそうになってるから、皆様のスケジュールの調整」
小さい会社は社長が気を使わないとね。と、付け加える。
「うらやましいからって仕事入れたら、殺すアル」
「神楽ちゃん、大丈夫、僕が代わりに仕事請けるから」
新八は慌てていった。
「銀さんは、クリスマスどうしてるんですか?」
「俺は、特に何もないなぁ」かったるそうに答えた。
「彼女と2人で仲良くご飯食べたりしないんですか」
「銀さんもてないし」
そうかなぁ、と新八は思う。本人の自覚がないだけで、銀さんは男女問わずモテている。
女性が見とれているさまを見ると、誇らしげなのと同時に、女性にもてる人がわざわざ男の僕を相手になんて
しないだろうなぁ、と思ってしまう。新八も銀時が好きだが、言わないことにしている。
気味悪がられて、離れられてしまっては何にもならない、だったらこのままがいい。と思っているのだ。

そうして、忙しい日々を過ごして、明日はクリスマスイブというところまで来ていた。
もちろん、銀時から泊まりにこい、ともいえず、新八も何も言わなかった。
「おはよーございまーす」
いつものように新八が出勤してきて、2人を起こして、朝ごはんを食べる。
「あぁ、そうだ。24日休みにするから」
「「え?」」二人は驚いた。
「だって仕事はいりそうって」
「こなかったから」本当は全部断ったのだが。
喜ぶ神楽に対して、新八は言いずらそうに
「あの・・・、銀さん」
「どーした新八」
「24日泊まりに来てもいいですか」
「・・・え?」
「ダメ・・・ですか?」眼鏡の奥の瞳が困ったようにしている。
「ダメじゃない!!全然ダメじゃない!!なぁ、神楽」
「あたしはいないから知らないアル」
神楽は、関心がないように言った。
「クリスマス、男ばっかりのむさいものになりますけど」
むさくなんてない。お前と過ごせるクリスマスなんて幸せすぎて・・・。
「銀さん?聞いてます?」
呼ばれて、われに返る。
「あぁ、聞いてる。まさか公認サンタになるのにクッキーの早食いはないよなぁ」
「なにを聞いてた!このマダオがぁぁぁ!!」
まったく、といいながら、もう一度繰り返す。
「姉上が、スマイルの皆さんとクリスマスの2次会をするんですって、うちの道場で。女だけの2次会だから
僕はお払い箱なんですって。」
「お前も大変だな」
「姉上が、楽しそうならいいんですけどね。あ、銀さん先約はいってませんでした?」
「いーや、別になにもねぇよ。」
仕事を入れなかったのは、24日新八が泊まらないのなら一日会わない方が自分の感情的にいいと考えたのだ。
しかし、神様は銀時にチャンスをくれた。
「そうしたら、24日は夕方から行きますね。」
「昼間は?」
「ちょっと用事があるんで。」というと、外から「銀さん!!早くきとくれよ!!」と
依頼主から声がかけられた。
「やべっ、こんな時間。今日もがんばるぞ」
「「おー!!」」
ばたばたしながら、今日の仕事に向かった。

銀時の仕事は午前中に終わるものだった。午後からは、計算と給料の振り分け、それと明日の予行練習・・・。
でも、どうしたらいいんだ、と思って、考えながら町をうろついてると、よく見る黒い制服を見つけた。
同じ体格のそいつは鬼とか言われてるけど、もてるとも聞く。ここは恥を偲んで・・・。
「おーぐしくん」
その、瞳孔を開きっぱなしにした男は歩を止めると「土方だ、コラ」と殺気全開で振り返った。
「ちょっと、相談があるんだけどさぁ」
「あ?何の冗談だよ、気味わりぃ」
「ちょっと位善良な市民の話を聞いてくれてもいいんじゃない」
「誰が善良な市民だよ」
「まぁまぁ、実はさ・・・」
話を進めるうちに、土方は面白いくらいに話に乗ってきた。そして、お互いの境遇を知った。
さすがに似てる二人だけ会って、お互いの悩みをお互いが解決して、それぞれの家路についた。
夜、今月の労をねぎらい、奮発した給料を渡した。
「今月は働いたって感じしますね。この厚みがまた・・・」
「こんな厚い札束始めてみたアル!!」
「変なはしゃぎかたしないの。神楽、旅行で使い果たすなよ。新八、アイドルに金突っ込むなよ」
「大事に使えって言えばいいじゃないですか」
じゃあ、というと新八は「明日夕方来ます」といって、万事屋を後にした。
明日の夕方、か・・・。今から銀時はソワソワしている。
「あたしももう寝るアル。お休み銀ちゃん。明日はがんばれよ」
というと、寝床に入ってしまった。
「がんばれって・・・、アイツ気付いてるのか・・・。」

翌日、期待しすぎて、緊張しすぎて、眠れない銀時がいた。
「行ってくるアル〜」
と、朝早く迎えに来た沖田君とともに神楽はいってしまった。
定春も迎えが来て、午前中には出てしまった。
「どーすっかなぁ」呟いても一人。
とりあえず、夕食の準備でもするかと買い物に出かけた。
スーパーで、一通りの買い物を終えて、帰ろうとしたときに、見慣れた眼鏡を見つけた。
声をかけようとしたときに、店から女性が出てきて、新八となにやら話したと思うとおもむろに抱きついた。
瞬間、世界がモノクロになった気がした。
新八と・・・彼女?二人は、何かを買ったらしく、荷物をもっていってしまった。
銀時は呆然と立ち尽くしていた。
「そうだよな・・・」
新八だって男だ。アイドルオタクだ。そりゃ男よりも女のほうがいいだろう。でも、今日告白しようとした
その日に、そんなもの見せなくても。そして、今日、アイツは泊まりに来る。
神様、あんたそりゃ残酷じゃないかい。銀時は天を仰いだ。

「あれ?暗いなぁ」万事屋にきた新八は内心焦った。
銀時が喜ぶようないわゆるブランド物の甘味を山のようにもってきているのに、出かけられてしまっては
何もならない。
「こんばんわー」中に入ると、放心状態の銀時がソファに座っていた。
「うわっ・・・、銀さん。外はずいぶん暗いですよ。灯りつけますから。」
「あぁ」心ここにあらずの状態で、銀時は返答する。
「銀さん、今日は僕から心ばかりのプレゼントです。」
というと、目の前に甘味を並べる。
「姉上とすまいるの人たちに聞いて、いろいろなところから買ってきたんですよ」
「新八・・・」
力なく、新八を見つめる。
「銀さん!!どうしたんですか!!」
「新八・・・、今日は最悪の日だよ」自嘲気味に笑う。
「銀さん・・・、僕でよかったら、話聞きますよ。」
「あぁ、聞いてくれるか。俺にはずっと想ってる人がいたんだよ。それはそれは大事に想ってたんだ」
初めてだったんだよ、こんなに焦がれるなんて。と、呟いた。
新八の心も痛んだ。銀時にはやっぱり想い人がいたんだと。それを悟られないように、続きを促した。
「今日、まさに今日。告白しようと思ったんだけど、見ちゃったんだよ。相手がいたんだよ。そいつは俺のために怒ってくれたり喜んでくれたり笑ってくれたり泣いてくれたり、感情豊かでな。一緒にいるだけで安心するんだよ。家族のいない俺にとってよりどころだったんだよ。」
「勘違いって事は、ないんですか」
憔悴している銀時を気遣うように言う。
「抱きつかれてたんだよ、公衆の面前で。もうアウトだろう」
なんで、今日、なんだよ。呻くように呟くとうなだれた。
そんな銀時の横に座ると、新八は、
「僕なら、そんな想いはさせないのに・・・」と呟いて、はっと口を押さえた。
いってはいけないことだった。銀時に焦がれてる自分は殺さないといけないのに、こんな状況でこんな事・・・。
「・・・新八?今、なんて・・・」
銀時の両目が大きく開かれている、まっすぐ見つめられて、いたたまれなくなる。
「新八、今お前何か言ったよな。俺に何か言ったよな。なぁ、新八」
「いってません」「聞こえた。確かに聞こえた。もう一度、その言葉を俺に与えてくれよ」
歯を食いしばって、緊張に耐えていた新八が意を決したように口を開いた。
「僕なら、そんな想いはさせません。」
「新八・・・。」銀時はわれにかえると、自嘲気味に、
「同情はいらないぞ。お前には彼女がいるだろうが。」
「はっ?彼女ですか?」何のことと、首をひねる。
「今日、昼間抱きつかれてただろう」と睨んだ。
「昼間・・・、あ!あの人は、姉上のところの新人ですよ。」
「へっ!?」
新八は今日の昼間の事を説明した。
元々今日の午前中はすまいるクリスマスイベントの装飾手伝いが入っていた。その買出しだったのだ。
もらった給料から、2次会のワインをプレゼントしたら、抱きつかれてしまった。そして、女所帯の新八には
そのくらいのスキンシップどうでもなかったのだと。
「すまいるからも、今日のお給料もらったんです。銀さんと外食でもと思って。」
せっかく、二人きりだし、と付け足した。そして、新八も思い至る。
「さっき、抱きつかれてたって・・・、もしかして、銀さんの想い人は・・・。」
「えーい、お前だよ、悪いか!!」なんつーかっこ悪い告白だ、と銀時は頭をガシガシかいた。
「ずっと、ずっとお前が好きだったんだよ。俺のよりどころなんだよ、安心できんだよ。何でもいえるし、弱音も吐けるんだよ。お前の暖かさに人間らしさに俺は惚れてるんだよ」
やけになると、口のすべりもよくなる。言いたい事を一気に言った。
はあはあと肩で息をしながら、新八をまっすぐ見て、
「気持ち悪いだろ」と、嘲笑った。新八は泣いていた。
「ぎんさん・・・」「新八、気持ち悪いからってなく事「違うんです!!」
新八は、泣きながら、「うれ・・・しいんですよ。ぼく、僕も・・・同じだから。僕もあなたが好きだから。」
「本当か!?」
新八はこくりと頷く、銀時は頭で考えるよりも早く体が動いていた。抱きしめていた。
「いいんだな、俺でいいんだな。もう、離さないぞ、銀さん束縛さんだよ」
「離さなくていいですよ。僕ももう、離れる気はないですから。」
新八の涙が落ち着くと、どちらからともなく、顔を近づけた。

クリスマスにもらったものは、いっぱいの甘味と、久しぶりの外食、二人きりの時間、
そして、大事な大事な想い人からの想いだった。


やっぱり真選組が好きみたいですあたし。
万事屋の話はうまく書けません。丸々没にしながら何とか書いた感じです。
本当は、いりいろあったんです。でも、勘違いして、落胆した銀さんを書きたくて、がんばったら、惨敗でした。
この絡みで、真選組編も作りました。こっちは簡単にできたのになぁ。
私の書く銀さんは、ちょっと弱くてもろくて危うい感じが多いです。
出てくる話大体、銀さんが弱音吐きまくりです。                 12/22

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