一番の贈り物


「あれは・・・」
副長と・・・万事屋の旦那。どうして二人で仲よさそうに歩いているの?

今年は初めて愛する人とのクリスマス。
僕の愛する人、真選組の副長土方さん。鬼の副長なんていわれるけど、確かに怖いけど、
誰よりも頼もしくて優しい憧れの人。
でも、どうして、俺みたいな地味な人間を選んでくれたのだろう。
釣り合いが取れないよなぁ・・・。溜息をついていると
「山崎、後でちょっと部屋まで来てくれ」
「はいよっ、副長」
と、副長に呼ばれた。何だろう。
「副長、山崎です」
「おう、入れ。」
失礼しますと中に入ると、文机に向かって書類を書いている副長がいた。
「じつは・・・」
副長の顔はかなり真剣だ。どうしたんだろう。
「クリスマス、25日の休み、取れなくなっちまった。」
思わずでそうになった驚きを飲み込む。
「どうしたんですか?」
「いや、それが、総悟の奴が25日休み取れないと彼女に振られるとかで、俺に土下座してきてなぁ」
沖田隊長の彼女、チャイナさん。きっと25日出勤とか聞いたとたん大喧嘩なんだろうなぁ。
この二人の場合喧嘩というよりももう戦争だしなぁ。
「見るに見かねて、譲っちまったんだよ」
アイツが、人に執着するなんざ、初めてだしなぁ。と、付け加えた。
「俺は、平気ですから。24日の夜一緒にいれれば十分です」
楽しみにしてなかったわけではない、でも、目の前の人間は重役についている。
サボってでも一緒にいて欲しいなんて言えないし・・・。
「本当に?寂しそうな顔してるぞ」
副長が覗き込んできた。
「大丈夫です。しょうがないじゃないですか」
笑顔で、副長に答える。我侭なんていっちゃいけないよ、な・・・。嫌われちゃう。
「夜は絶対なにを差し置いてもお前と一緒にいる」と副長は優しく抱きしめてくれた。

でも、俺は目撃してしまった。万事屋の旦那との密会の現場を。
旦那も副長も嬉しそうに楽しそうに話してる。そして、買い物をして、お茶して。
軽くデートしてるようにも見れた。俺の顔は真っ白だったろう。
どこをどう歩いてきたのかわからないけど、俺は屯所にいた。
「ザキ!!顔が白いぞ。具合でも悪いのか?!」
俺を見た局長はものすごく心配して、今日は休むように言われた。
床について目を瞑ると旦那と嬉しそうに笑う副長の顔が浮かんだ。そして、今日見た事がフラッシュバックした。
寂しいような悲しいようないろいろな気分が混沌として、涙が出てきた。
やっぱりだよ。やっぱりなんだよ。俺みたいな地味な男じゃなくて旦那みたいな人のほうがよかったんだよ。
俺とはきっと遊びだったんだよなぁ。俺が、勝手に気持ちを打ち明けて、受け入れてもらっただけでなく
付き合ってくれるって言われて舞い上がって。副長はどういうつもりで俺を受け入れたんだろう。
旦那と副長にあってるよなぁ。二人とも男前だし二人で歩いてると女性は見とれてたし。
つりあいも取れるし。副長の隣は俺じゃないんだよなぁ・・・。
廊下を走る音が聞こえる。
「山崎!!大丈夫か」障子の前で止まったのは憧れの人。
「大丈夫ですから、入ってこないでください」違う、顔が見たいのに。
「やま・・・ざき・・・?」副長は驚いている。当たり前だろう。
「移ると嫌なんで」咄嗟に嘘をついた。
「あ、ああ、無理、するなよ。」困惑した声を残して、副長はいってしまった。
副長の影がなくなったのが合図のように涙があふれた。
「・・・っく、うう・・・」
嗚咽をかみ殺して、顔を枕に押し付けて、泣いた。
気がついたら、外は明るくなっていた。泣いたまま寝てしまったのだろう。
今日は、クリスマスイブ。今日の夜、副長と一緒にいる約束をしている。
この際だから、はっきりした方がいい。別れよう、その方が、俺にも副長にもいいのだろう。
普通に着替えて食堂に行く。いろいろな人がどうも心配してくれたらしく、
大丈夫か?仕事変わるか?等々声をかけられた。
「おうザキ!調子はどうだ!」局長にも笑顔で聞かれた。
「はい、おかげさまですっきりです」と笑顔で返す。
「しっかり飯食って、今日もがんばるぞ」「はい!」
「今日はすまいるでもクリスマスパーティでさぁ。お妙さんのサンタ姿はさぞかし綺麗なんだろうなぁ」
と、朝から、夢見心地だ。
「局長は、いかれるんですね。」
「もちろん。仕事きっちり終わらせて、いってくるよ」
クリスマス、ちょっと前まで、局長と同じ気分だったのに、こんなに沈む日になるとは・・・。
「おはよー近藤さん。山崎。」
眠そうな副長がやってきた。
「おはよう!トシ!」「おはようございます」
「山崎、お前もう大丈夫なのか」
「ええ」顔も見ないで、短く返事をする。この人に今日、別れ話をするんだ。
じゃあ、俺はこれで、と席を立った。
副長は何か言いたげだったけど、局長がお妙さんの話を延々としてくれてるから、追いかけられないのだろう。
その後は、勤務で顔なんてあわせなかった。部屋に戻ると、副長からのメモが入っていた。
『部屋で待っている』一言だけだった。
その手紙すらいとおしい思うのに、でも・・・。
もし、俺の存在が副長を苦しめるものなら、俺の想いは報われなくてもいい。
今みたいに、飼い殺しになってる方が、辛い・・・。
気持ちを固めると、副長の部屋へ向かった。別れ話をするために。
今日は、隊士の数も少ない、休みを取る人も多いし夜勤で張り詰めの人も多い。
屯所に残ってるのはもしかしたら俺たちだけかもしれない。
「副長、山崎です」
「入れ」短く、それでも俺を招き入れる優しい声。
入ると、何も言わず副長が抱きしめてきた。
副長の匂いとタバコの匂いが気持ちよく香って、このままずっといたいと思った。
でも・・・
「副長、離して下さい」意外なほど俺の声は冷たかった。
驚愕の顔で俺を見る。
「大事な話があるんです」まっすぐ副長を見詰めると俺は言った。
「・・・なんだ。」副長の声も緊張している。
「別れましょう」単刀直入に言ってしまった。もっといろいろ言う事があったのに。
副長の瞳孔がさらに開いたように見えた。
「何でだよ!!俺は認めないぞ!!俺から離れるなんて認めないぞ!!」
その勢いに一瞬ひるんだけど、でも、話をしなければ。
「副長にふさわしいのは俺じゃないでしょう。俺みたいな地味なさえない人間よりももっと旦那の方が・・・」
「どうして、そんなこと思うんだよ、山崎」
「ずっと、ずっと、おかしいと思ってたんですよ。どうして、俺を選んでくれたのかって。」
一息つかないと、涙がこみ上げてきそうだった。
「カモフラージュ、だったんでしょ。旦那と付き合ってるのを隠すために、俺を利用「何いってる!!」
鋭い眼光に打ち抜かれそうだった。
「総悟か?総悟に吹き込まれたのか?」副長は動揺している。俺は首を横に振ると
「昨日、旦那と密会してるところを見たんです、俺。その後もずっとつけてたんですよ」
これで、きっと白を切るのもやめるだろうと思ったら
「はははははは!!」急に副長は大笑いし始めた。
「笑ってごまかそうなんて、そんなの聞きませんよ。」俺は、冷静に言った。
「ごまかしねぇ」ひとしきり笑った後の副長はにやりとして、俺を見た。
「山崎、これ」と、俺に小さな箱をくれた。
「答えになってません!!」と、わけのわからない状況に怒ると
「開けたら答えが出るよ」と、言われた。仕方なく、ラッピングをはずし箱を開けると
「これ・・・」中にはシンプルなリングが2つ。副長を見ると、赤い顔して、はにかんでた。
「付き合って、初めてのクリスマスだし、ちょっと奮発してみた。」と、鼻を掻いていた。
昨日の事の真相はこうだった。
俺へのクリスマスプレゼントで悩んでいた副長とクリスマスに告白しようとしている旦那が偶然会って、
副長が女にもてるからと思っていた旦那がそのことで相談を持ちかけているうちに意気投合して、
買い物に付き合ってもらって、お礼と悩み相談で、お茶をした。
嬉しそうな顔をしていたのはお互い思いをはせる相手のことを考えていたからであって。
「このくらいシンプルだったら、任務にも目立たないだろうし、チェーンもあるから。」と、
副長はその箱から、一つ取り出し、俺につけてくれた。
「山崎」つい、その指輪をまじまじと見ていたら、呼ばれた。
そして、俺も、副長の指に指輪をつけた。
そのあと、副長に後ろから、抱きこまれる格好になって、そのまま話をした。
「昨日、体調不良で休んでるって聞いて、心配したのに、部屋にはいることも拒絶されて不安だった。」
「副長・・・。ごめんなさい」
「謝るなよ。お前も不安だったんだろ。昨日の夜泣いてたろ」
「・・・」
「お前が告白してきたから、お前だけが舞い上がってるとか思ってたろ」
痛いところを突かれて真っ赤になる。
「お前に告白されて、俺だって嬉しくて嬉しくてしょうがなくて、本当は公表したいくらいなんだぞ。」
見上げると、赤い顔した副長がいた。
「嫌ならきっぱり断るよ。山崎だからだ」
というと、耳元で、
「本当に、大事なんだよ。お前が。あいしてる」
といわれて、その言葉が体に染みていった。

俺がクリスマスにもらったものは、指輪と、愛されているという自信。両想いだという確信。
そして、世界の誰よりも素敵な時間だった。


真選組を書くつもりはなかったのですが、万事屋を考えていたらかってにあばれだしました。
山崎さんと土方さんは勝手に頭の中で動き出します。
甘いなぁ、と思いながら書いていた気も・・・。
どんどん土方さんが甘い人になってきてる、最初の方は全然固い人だったのに。
もっと固い人目指したいなぁ・・・。ちょっと万事屋編と絡んでたりします。
連載のクリスマスも早く仕上げないとなぁ。                            12/22

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