その気持ちの向こう側には


そのむかつくヤローが目に付くようになったのはいつの頃からか。

土方サイド
なんだか、見回りに行くたびに目に付いた銀色のふわふわした髪。
あの髪を見るとひところ文句付けに行きたくなる。
見ないふりもできるのだが、どちらからともなく話しかけている。
俺が睨みに行くか、あいつがかったるそうに「大串く〜ん」と話しかけてくるか。
それが、いつの間にか心地よくなっていて。
いつの間にか、そういうことが義務のようになっていて。
いつの間にか、もっともっと仲良くなりたいなんて思っていて。
「・・・なんでだ?」
自問自答しても何も答えは出ない。
でも、一緒に呑んだり馬鹿やったりしてみたいと思った。
しかし、友達の作り方なんてわからない。
今つるんでるやつは刀で話してぶつかり合ってそうしてわかりあった。
でも、あいつに戦いを挑んでも前のようにかわされるだけだろう。
じゃあどうしたら・・・。
あいつの好きなものでもあげてみるか。ってことは甘いものだな。

銀時サイド
たまに街中に見つける黒い隊服黒い髪開いた瞳孔。
あのきれいに開いた瞳孔を見つけるたびになんだか吸い寄せられるように近づいてしまう。
「おおぐしく〜ん」
「あ?土方だって言ってんだろ。そろそろお縄に着くかぁ?」
「健全な市民を逮捕したら困るの大串君じゃん」
「どこが健全な市民だよ」
「どこぞの瞳孔開いたバイオレンスな警官よりはましですぅ」
「よしわかった、刀抜けや。今日こそ決着つけてやる」
「本当に勝てるの?」
「お前こそ俺に負けるのが怖いんだろ、怖いんだろ」
うーっと睨み合って、お互い反発するように離れる。そして、別々の方向に歩き出す。
別にそれだけのやつだし、なんとも思ってない。というか、あまり人に執着しないんだよね。
じゃないと・・・、別れたときに離れていくときにつらいから。
でも、最近なんかおかしい。
よく甘いものをくれるようになった。しかもほとんどが話題のお店だ。
「屯所で配られた」とか「たまたまだ」とかいろいろ理由はあるけれど、そう毎回お菓子を持ち歩かないだろう。
明らかにおかしい。俺、何かしたっけ?
思いをめぐらせながら歩いてると、ジミーにあった。
「よぉ、ジミー」
「あ、旦那」今日は仕事ですかと駆け寄ってくる。
「うん、久しぶりに仕事なんだよね。それよりさ、ちょっと聞きたいんだけど」
「なんですか」
「最近、おおぐ・・・土方なんかおかしいところない?」
「えっ、副長ですか・・・。いつも通りマヨと煙草をこよなく愛してますよ」
「あ、そう。後さ、屯所っておやつ配るの?」
「おやつ・・・ですか。戴いた時は局長と副長には報告がてらもって行きますよ。局長は手をつけますが
副長は甘いもの苦手ですので、ほとんど報告を聞くだけですよ」といった後、首をかしげた。
「どうしたの?」
「そういえば、最近副長甘いものの差し入れが入ると必ず一つ手に取りますね。」
それと、と続けた、
「隊士においしい甘味所の話聞いてましたね。」
女の人でもできたのかな?とまた首をかしげる。
「ふーん・・・。なぁ、ジミーと土方って一緒に見回りあるの?」
「へっ、なんです藪から棒に」
「いいから、あるの?」
「ありますよ、次は来週の木曜かな」
「ちょっとお願いがるんだけど・・・」というと山崎に耳打ちした。
「なんだってそんなことするんです?」山崎はどうしてこんなことするのか意味がわからなかった。
「まぁ、いいから、悪いようにはしないよ」
全部終わったら、お前は怒られないようにしておくから。と続けた。
「まぁ、別にかまわないですけどね。」
「来週の木曜日よろしくな」というとはいよっと言うと仕事に戻っていった。

そして、当日。
見回りに行くルート先に銀時は待っていた。
土方はそれを見つけると思わず歩み寄っていた。
山崎は覚悟を決めて、ゆっくり銀時のもとに向かう土方を追い越して
「旦那じゃないですか」と話しかけた。
「おお、ジミーじゃねぇか。元気か?」
「ええ、旦那もお元気そうで」
「まぁな」
土方は自分の目の前で自分の部下と銀時が仲よさそうにしているのが気に食わなかった。
そして、寂しかった。やはりあれだけいがみ合ってたんだ、おいそれと仲良くなんてなれない。
わかっている、でも、あれだけいがみ合えたんだ、裏を返せば仲良くなれそうなのに。
どうやって、仲良くなっていいかわからなかった。そして、その方法を知ってる山崎がうらやましくて妬んだ。
「山崎勤務中に無駄話してんじゃねぇぞ」
山崎をつい睨みつけてしまった。
「あれ、大串君いたんだぁ」
銀時が揶揄すると、一瞬寂しそうな顔をしたがすぐに鉄火面のように無表情に戻った。
その一瞬を銀時は見逃さなかった。
「ごめんごめん、友達のジミー君がいたからつい話し込んじゃった。」
山崎はぽかんとした顔をしている、土方は今度こそ怯んだ。
「おめーの友達は勤務中だ邪魔すんなよ」
「ふぅん」
「な、なんだよ」
「ううん、なんでも。ジミーごめんね。仕事がんばれよ」
「いえ、こちらこそすいません」山崎は何かもわからずに謝った。
銀時は手をひらひら振るとそのまま立ち去った。
土方は若干打ちのめされた気分になった。自分はもっと仲良くなりたいだけなのに。
「なぁ、山崎」
「はいよっ」
「万事屋とはどうやって仲良くなったんだ」
急な問いかけに、山崎は面食らった
「どうしたんですか!?」
「なんでもねぇ、けど、何であんなやつとつるんでんのかと思ってな」
土方は、煙草の煙を吐き出した。
「いや、なんとなく話をしているうちに仲良くなったというか」
「ふぅん」
山崎は俺と違って感情が豊かだからな、そういうところが普通に話してるだけで仲良くなれる秘訣だろうか。
ぼんやり考えていた。
翌日、銀時と山崎が出会った。
「悪いねぇジミー」
「いいえ、これでよかったんですか?」
「上等上等」
「ちょっと仲良さげに、副長より先に話しかけてきてってことですよね。」
「大丈夫、これでよくわかったから」というと、銀時はにやりとした。
「わかった?」山崎は何がなんだかわからない。
「こっちの話、全部終わったら話すよ」ところで、と銀時は言うと
「次、二人が一緒の見回りはいつ?」
「来週の火曜ですね」
「もう一回だけお願いがあるんだけど」
「何ですか」
銀時は山崎に耳打ちする
「ええっ!!それこそ俺、怒られますよ」
「大丈夫、怒られないようにしておくから。」銀時はにやりと笑うと去っていってしまった。

次の見回り当日。
山崎は、心の中で土方に謝りつつ、土方をまいた。
「くそっ、山崎のヤロー見つけたらぜってぇしばく」
土方が山崎捜索をあきらめたそのとき、ふわふわした銀髪を見つけた。
銀時も、土方を見つけると、
「おおぐしく〜ん」と手をひらひら振っている。
「ひじかたっつってんだろ」と、土方は一睨みを返すが、銀時には答えない。
「よかったらちょっと休みなよ。いま、依頼の帰りだから缶コーヒーくらいはおごれるよ」
「勤務中だ」
「なに言ってんの、ちょっと位平気だって。いつももらってる甘味のお礼も兼ねて奢らせてよ」
「・・・少しだけだぞ」
お礼をしたいというのを無碍に断ることもない、それ以上も以下もないと土方は言い聞かせた。
公園で、ベンチに座って、二人でコーヒーを飲む。ふと、銀時が言い出した。
「土方、俺に何か言いたいことあるでしょ」
「ねぇよ」
「じゃぁ、俺になってもらいたいものがあるでしょ」
「・・・ねぇよ」
「素直じゃないなぁ。別に食べ物には釣られないよ」
土方は一瞬目を見開くとまた、冷静な表情に戻った。
「何のことだ」
「甘いもの。大串君ずいぶんがんばってくれたんでしょ」
「屯所にあったもの「じゃないよね」」
さえぎるように話すと、銀時は続けた
「ごめんね、ジミーに話し聞いちゃった。その上で、協力してもらったんだよね。」
土方は黙って聞いている
「友達になりたいんだろ」
見透かされた胸のうちに動揺して、銀時を見ることもできない。
「あのさ、大串君友達の作り方間違えてるよ」
「えっ・・・」
「物をあげたりすることで人を釣って友達になるのは間違ってる。素直に「友達になりたい」でよくない?」
「いや・・・でも・・・」土方はしどろもどろだ。
「友達作るの苦手だろ。俺とお前は似てるからなぁ。俺も友達作るの苦手だし」
土方はためらいがちに口を開いた。
「今まで、刀で分かり合うしか仲間を作る術は知らなかった。お前はそういうことしなさそうだし」
「だから素直に友達になりたいで良いって言ってんだよ」
土方は黙った。
「気付かないの?」銀時はいきなり聞いてきた。
「なにに、だ。」
「大串君」
土方は何の事だかわからない。
「俺が土方のこと大串君って言ってること。」
「いつも言ってるじゃねぇか。何が言いたいんだ」
「だからね、人と早く親しくするにはあだ名を作って打ち解けられた気分を醸し出すことなんだよ」
「大串って・・・あだな?」
「そうだよ」
土方は、笑い出した。そういうことだったのか、俺一人で空回りしてたのか。俺が思うより仲良くなることなんて
簡単なことだったのか。
「万事屋」
「なに?」
「今度、さしで呑みにいかないか?」
「おごってくれる?」
「友人のよしみだ一回くらいはおごってやる」
「大串君、ふとっぱら〜」
「はいはい」というと
「山崎、でてこい」と、山崎を呼んだ。
「気付いてましたか」
「あたりまえだよ」
銀時はびっくりしてる
「ジミーいたの?!」
「ええ、旦那がなに考えてるか分からなかったんで」
銀時は事の真相を語った
山崎に仲良く話しかけてもらって、土方がどういう反応をするか、もしかしたら友達になりたいのかもとは思っていた
そして、案の定、寂しそうな顔を怯んだ顔を見て、確信へかわった。
「で、現在にいたってるわけ」
「なるほど・・・」
「今日は無罪放免にしといてやるよ」土方は上機嫌のまま言った。
「よ、よかった・・・」
「山崎、悪ぃが見回りやっといてくれねぇか」
「はいよっ」
山崎は、二つ返事で行ってしまった。
「そういえば、大串君手ぇ出して」銀時が急に言い出した。
「なんだよ」といいつつ土方も手を出す。
手のひらに乗ったのは、マヨネーズのストラップ。
「この間ガチャガチャやったのよ。神楽がほしいストラップがあるとかで」
「ああ」
「で、俺と、新八もやったんだけど、二人してこれをとったのね。新八はいらないって言うから、俺がもらったの」
銀時の手にはスクーターの鍵、とそれについてるマヨネーズのストラップ。土方が持ってるものと同じもの。
「で、俺が取ったのを大串君に。新八からもらったのを俺が使おうと思って。友達のしるし」というと、銀時は笑った。
土方は、どうしてか泣きそうだった。こんなに満たされた気分になることも初めてだった。
友達になりたいと思ったやつが友達になってくれた。それだけなのに。でも、それは大事なこと。
「ありがとう、大事に使うわ」
「うん」
「なぁ、万事屋。俺な、歳の近いそれでいて隊のやつじゃないやつと仲良くなりたかったんだよ。やっぱり隊のやつばかりだと視野が狭くなるから。俺は、広い視野を持たないといけないと思ってるんだ」
「うん」
「お前とは歳も近いし、考えることも似通ってるし。最初こそ、腹立つやつだったけど。いつの間にか仲良くなりたいなぁと思ったんだよな。どうしてかわからないけれど」
「理由なんてないんだよ。友達になることに。」
そうだな、と土方はポツリと呟いた。
「俺もな、周りは餓鬼だったりババアだったり。歳が近くてもオカマだったり。いなかったんだよな。歳の近い普通のやつ」
「ああ」
「お前を見るたびになんとなく引き寄せられていたんだよな。今思うと仲良くなりたいと思ってたんだと思う」
「ああ」
「よろしくな」
「・・・なんか照れるな」
「いいんじゃないの」銀時はまた笑った。つられて土方も笑った。
「なんだ、大串君も笑うんじゃん」
「どういうことだよ」という土方は恥ずかしくて赤くなった。やっぱり笑い顔は似合わないか・・・。
「そういう顔で話しかければ簡単に友達になれるんだよ。いつもいつも睨みつけられるから。仲良くなりたくても近寄れもしないんだよ。ジミーみたいに笑顔で話しかければ、簡単に仲良くなれるんだよ」
いい笑顔じゃん、と銀時は土方を見た。
「・・・」土方は照れて声も出ない。
「あれ、大串君照れてんの?」
「るさい、黙れ」
「結構かわいいとこあるんじゃん」
「黙れってんだろうがぁぁぁぁぁぁぁ」照れ隠しに暴れだした。
「と・に・か・く。今度呑みに行こうねぇ。これ俺の電話番号。連絡待ってるよ」
と、名刺を土方に渡すと、銀時は手をひらひら振って、
「すぐにでも良いよ。待ってるねぇ」
と照れて真っ赤になっている土方を残して行ってしまった。

土方と名刺とマヨネーズのストラップが残った公園で、土方はぼんやりとしていた。
「友達・・・か」
なんだか、心が暖かくなる。友達の万事屋。なんだか、楽しい響きだ。
『連絡待ってるよ』
そんなことを言ってくれる日が来るなんて。そろそろ万事屋につく頃か。なんて思いながら、土方は携帯電話を取り出した。
「っとその前に」
マヨネーズストラップを携帯につけると、万事屋の番号を押した。


私の書く銀さんはちょっと軽い人のような気もします。
土方さんは、いろいろなことに不器用。
でも、フォロ方十四フォローなんだよね。
でも、なんとなく書いてるうちにこうなってしまいました。
前回、UPしたものと相反してますが、まぁ、お気になさらず・・・。
                                          20080406
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