たまには君の言葉を頂戴


「もう帰るネ」
「何でィ、まだそんなに遅い時間じゃねぇだろィ」
「あまり遅くならないように、銀ちゃんに言われてるネ」
またか・・・、神楽は何かと言うと、
「銀ちゃんに言われた」という。
確かに旦那はあいつを預かってる、だからいろいろ言うんだろうが
素直に従うあいつもなんだかと思う。
「はいはい、じゃあ、気をつけて帰れよ」
俺は諦めた様にひらひら手を振ると、その姿を見送った。

屯所に戻り、土方コノヤローを襲撃してもやっぱり気持ちは治まらない。
「チャイナ・・・」
旦那がどう思ってるかは知らないけれど、もしかしたら神楽は旦那のことを・・・。
もしそうだとしたら、俺のこの気持ちはどうしたらいい。
俺の話には反発しかしないのに旦那の言葉には素直に従う・・・もんなぁ。

その日から、なんとなくチャイナに会うのが嫌でいつもの公園にも足が遠のいた。
久しぶりに、公園に行ったらいつも通りの神楽がいた。
「よぉ、久しぶりですねィ」
いつもどおりに声をかけたら、吃驚した様なちょっと苦しいようなゆがめた表情で
「もう、こないかと思ってたアル」
「俺だって忙しいときもあるんでさァ」
「サボり放題の癖によく言うアル」
「相変わらず減らず口ですねィ」
ふん、と言うと酢昆布をかじりだした。
「チャイナァ、酢昆布かってやりましょうかィ」
「マジでカ!?」ぱっと嬉しそうな顔をすると
「・・・いらないアル」と、俯いた。
「なんで」
「男から物を買ってもらったら危険だからだめだって銀ちゃんが・・・」
またか、あの人はどれだけこいつに禁止事項を作ってるんだよ。
「俺だったら大丈夫だろィ。それとも、大好きな旦那に言われたことを破ってばれたら嫌われるとでも思ってるのかィ」
「そういうわけじゃないアル・・・」でも、と続けると
「約束したことは、守らなきゃいけないアル」と言った。
「いい子ちゃんですねィ」
「当たり前アル」
「好きな人にはいい顔したいって訳ですねィ」
神楽は目を見開いてこっちを見る
「まぁまぁ、旦那には内緒にしときまさァ」というとベンチに腰掛け空を見上げた。
「そんなんじゃないアル」
「ん?」
「銀ちゃんは、地球のパピーね。知らないこといっぱい教えてくれるネ。」
「ふーん」
「だから、尊敬しているだけネ。」
「そうですかィ」
その後、何も言わずに時間だけが過ぎた。どうしてもさっきの言葉が言い訳にしか聞こえなかった。
神楽も、何も言わずにでもそこにいた。
「もう、帰るネ」
「まだ、早いだろィ。もうちょっとここにいなせィ」
「だめネ「銀ちゃんに怒られる、ですかィ」
もう聞き飽きた、その言葉。そして、言われるたびにちくりと痛むこの気持ち。
「たまには、自分の言葉で断りなせィ。じゃねぇと・・・」
諦められるものも、諦めきれねぇじゃねぇか・・・。
抱きしめると、耳元で囁いた。
「そう・・・ご?」
「自分の言葉で断るまで、今日は離さない」
旦那のことを好きでもいい、でも、はっきり自分の言葉で言ってほしい、俺だって
そこまで物分りが悪いわけじゃねェ。ただ、もがく前に諦めるのは嫌だ。
「・・・そんなの、無理ネ」
「何でですかィ」
「自分の言葉じゃ、断れないアル」
「だから、なんで」
「・・・たくないからアル」
急に小さくなった言葉に、つい聞き返すと、真っ赤な顔した神楽は
「断りたくないからに決まってるアル!!」
「えっ・・・」
「本当は、いつだって断りたくは無かったアル」
「神楽・・・」

断るたびに、神楽は苦しかった本当はもっと一緒にいたかった。
でも、この気持ちを気づかれるのはもっと苦しい、だったらいっそのこと
「銀ちゃんに言われてる」と言えば、総悟も無理に引き止めないだろうから。
だから、なにかあったら、ここぞとばかりに銀ちゃんの名前を出した。
本当の気持ちなんていえないから、誰かに言われてるって思い込めば自分の苦しみもまぎれる。
あいつは、真選組の隊長、容姿端麗、女性なんていわれなくてもよってくる。
自分なんかに話しかけるのも気まぐれ以外に何も無いんだろう・・・。
自分だけが、苦しい思いをしてるのも気づかれたくない。
だから、いつも、何をされるのも断っていた。
そうすれば、何も無い。自惚れることも浮かれることも無い。
断ることでちくりちくりと胸が痛んでも、これが自分のためと言い聞かせた。

「遅くなると銀ちゃんも新八も心配するネ。それは大事に思ってくれることの裏返しアル。わかってるアル」
でも、と神楽は続けると
「本当は、もう少しだけ総悟と一緒にいたかった。いつだって一緒にいたかった」
「神楽・・・」
「自分の言葉でなんて断れるわけが無いアル。断りたくないから、そんなの無理ネ。」
俺は、神楽に微笑むと
「断らなきゃいいだろィ」と一言言った。
どうして、という顔できょとんとしている神楽に、俺は携帯電話を出した。
「心配されるんだったら、俺が電話しまさァ。神楽はちょっと遅くなりますが、俺が着いてるから大丈夫だ、とね。」
「総悟・・・」
「どこにいるか、誰と一緒かわかれば、旦那も新八君も大丈夫だろィ」
だから、もう断るな、自分の意思のまま動いてほしい、と俺は神楽に言った。
「でも・・・」という神楽の口を自分の口で塞ぐと
「まだわかりませんかィ。俺の気持ち。あんたには話しかけてんのは、気まぐれなんかじゃないってこと」
あんただから、ですゼィ。というと、神楽は嬉しそうに微笑んだ。世界で一番綺麗な表情。
「ねぇ、総悟。」
「なんですかィ」
「もう一度、誘って。」今度は俺がきょとんとする番だった、神楽は嬉しそうに
「早く言わないと、アタシ帰ってしまうアル」
ああ、と思うと
「まだ早いじゃねぇですかィ。もっともっと一緒にいたいんですがねィ。まだ、ここにいなせィ」
「それも、そうアルね。お前がそういうなら、一緒にいてもいいアル」
と言って、隣に座った。
「じゃあ、万事屋に連絡しますぜ」
「頼んだアル」
俺は、万事屋に連絡を入れた。
「あ、沖田です。旦那は・・・、あ、旦那ですかィ。神楽もうちょっと預かりやす。俺がついてまさァ。ええ、じゃ、そういうことで」
というと、電話を切った。
神楽は、不安そうな顔をしている。
「大丈夫、俺がいれば安心だって言ってましたぜ」さて、と俺は伸びをすると
「いい定食屋があるんでさァ。ぜひあんたを連れて行きたくてねェ。」いきますよ。というと、神楽の手をとった。
神楽は、真っ赤な顔をしながら
「もちろんおごりアルな」お金は持ってないアル、と付け加えた。
「当たり前だろィ。これでも税金泥棒だからな。金は持ってますぜ」というと俺はふふんと笑った。それに、と続けて
「いくら芋侍といっても、惚れた女に金出さすほど野暮なことしませんぜ」といってやると、ますます神楽の顔は赤くなった。
「あっさり惚れてるとかいわれると恥ずかしいアル」
「それがまた可愛らしいぜすぜ、神楽」それと、と言うと
「いいですかィ。俺は心底あんたに惚れてますぜィ。忘れないでくれよ」
「アタシだって、総悟に惚れてるんだから、忘れんなよ」
ふふっ、と笑いあった。
これからは、旦那の言うことだって聞かせるもんか。俺の神楽だ、俺のものだ。
ちょっとした優越感とともに、神楽と定職屋へ向かった。

おまけ・電話をかけたとき、万事屋では・・・

「あ、沖田さんどうされ、銀さんですかお待ちください」
電話に最初出たのは新八
「銀さん、沖田さんから電話入ってますよ」
「へいへい」と、新八から電話をもらって、電話に出た
「もしもし、沖田君。・・・えっ神楽を、お前がついてるほうが危ないだろうよ!!おいって、おい!!沖田君!!・・・切られた」
「どうしたんですか」急に声を荒げた銀時に心配して、新八が出てきた。
「沖田君が神楽を預かるって・・・これって誘拐か!?なぁ、新八どう思う?」
新八は、少し考えると
「宣戦布告?ですかねぇ」
「はいぃ!?」
いや、ね、と新八は少し照れながら
「きっと、沖田さんは神楽ちゃんの気持ちを知ったんですよ。」
「神楽の気持ち?」
「神楽ちゃん、なんだかんだいっても沖田さんのこと好きでしたから。」それで、と銀時は促す
「きっと、沖田さんは銀さんに宣戦布告をしたかったんですよ。いつの日か、自分が神楽ちゃんを貰い受けるとね。」
「そ、それって・・・」
「あの二人なら、結婚してもおかしくないと思うんですよねぇ」
「いや、だめだろう!!お父さんは許しませんよ!!あんな超絶ドSの所にやるわけ無いだろう!!」
「だから、宣戦布告ですよ」新八は、くすくす笑いながらいった。
「・・・なぁ、新八」銀時は新八をじとっとみつめると
「どうして、そんなに余裕なの」
「まぁ、いずれはこうなるかなと思っていたので。」と嬉しそうに返事した。
「はぁ・・・」銀時はまだ、飲み込めていなかった。
「まぁ、そうなっても僕は銀さんのそばにいますから。安心してください」
「・・・新八」
「銀さん」
と、いい雰囲気になった直後、
じりりりりりりん!!と、電話が鳴った。今度は銀時がとる
「あ、旦那ですかィ。まぁ、新八君と思う存分いちゃついてくだせィ。俺と神楽は邪魔者みたいなんで、今日は遅くなりますぜィ」
「お前〜。いろんな意味で許さないからな!!」
半分くらいしか聞かずに電話を切られてしまった。
後に残ったのは、怒りに燃える銀時と期待に胸躍らせる新八だったとか。


多分、ぱっちゃんは神楽ちゃんからいろいろ愚痴られてたのでしょう。
それで気付いていたのでしょう。なんのかんのいっても二人は似合いだと。
オマケ部分が書いてて一番楽しかったなぁ。
神楽ちゃんの相手といえば沖田さんしかないですから。銀ちゃんには渡しません。
                                                           20080406
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