ハロウィンって地味に広がってるよね

「神楽しってっかー。10月最後の日の夜に、知ってる家にいって『トリックオアトリート』って言うとお菓子もらえるんだぞ」
「マジでカ!?」
「お化けのカッコしていかないとだめだけどな」
神楽はウキウキしながら万事屋へ戻った。
「ただいまよー。銀ちゃん銀ちゃん!」
執拗に銀時の名を呼ぶ。
「んだぁ、もっと静に帰ってこれねぇのか。こっちは二日酔いで、頭痛いんだよ」
「うっさいだめ天ぱ。いいこと教えてやるよ」
さっき聞いたばかりの話を銀時にもする。
「マジでか!?」死んだ魚のような目がきらめく。
「変装が条件アル」「何で変装しなきゃいけないんだよ」「そんなの知らないネ。」
「変装ねぇ、鼻眼鏡で良いか」
そこへ、洗濯物を畳み終えた新八がくる。
「それじゃだめですよ。ハロウィンの事だね、神楽ちゃん」
「ほろうぃん?」「あぁ、あのジャーマンメタルバンドまだやってたんだ」と銀時が手を叩く。
「ちげーよ!!ってかそのボケ、どんだけの人がわかるんだよ」と突っ込むと
「僕も寺子屋の時聞いてるからうろ覚えですよ」と言いながら新八が大まかな事を説明してくれた。
「で、お化けの仮装ですよねぇ」
「俺はこの間のでいいや」「アタシも、この間ので良いアル」
「銀さんの吸血鬼はいいとして、神楽ちゃんの着物はちょっと・・・。女の子だと魔女が多いですよね。」
「まぁ、妥当だな。」「わかったアル。魔女になって、お菓子もらいまくるアル、ほぁちゃー」
わかってない・・・、ツッこもうとして、新八はやめた。

一方その頃真選組
「はぁ?!10月末の夜屯所を開放するだぁ」
「あぁ、お上の命令で、何でもはろうぃんとかいう天人の祭りだそうだ。」近藤は伝える。
「あぁ、あのジャーマンメタルバンド、まだ、続いてたのかボーカル交代したりしたのに」
「副長!誰も知りませんよ、そんなマニアックな情報、何人がつっこんでくれるんですか」と山崎。
「ちっ、話しそれると思ったのに。めんどくせぇ」土方は文句を言いながら煙草に火をつける。
「それでだ」と近藤は話を続ける。
「何でも、仮装しなければならないらしい」「おれたちがか!?」タバコが落ちる。
「わかってくれ、トシ。お上の命令なんだ。」近藤がいさめる。
「で、どれがいい?」土方の目の前には衣装一式がずらっと並んでる。
「あぁ?!俺にやれってか」「この通りだトシ。これも真選組のイメージアップのためだ。」
近藤は頭を下げる。
「近藤さんの頼みなら断れねぇが・・・。」さすがに、鬼の副長がこんなかっこして・・・。
と考えていると、そこへ
「土方さんは、これがいいですぜ」といって、犬の耳を渡してきた。沖田だった。
「で、語尾はワンですぜ」「誰が言うかぁ!!」
沖田はからかうように、話を茶化すと「俺は、これにしまさぁ」と
吸血鬼の衣装を一式もって出て行った。
「ちっ、何だよアイツ。やけに決めんのはえーなぁ」
「まぁまぁ、アイツも隊長職だがまだ20にもならない、子供らしい遊びもしてないから、今回の件は楽しみなんだろう」
確かに、と土方は考えた。あいつはやっと18になったくらい。幼い頃から、仲間といえば俺らだけ。
こういうことを素直に楽しみだと思うのは、至極当然かもしれない。最近は年の近い仲間も増えたしな。
「ったく、しょーがねぇなぁ」
といいつつ、さっき沖田に渡された耳を持って、「俺は、これにするよ」といって、もって行った。
「なんだかんだいって、アイツもこういうの楽しいんだろうなぁ。さて、俺は・・・。」
と、残りの衣装から、近藤は自分の分を決めていった。

そして、当日。
「トリックオア」「「「トリート!!」」」
「お菓子もらってもらってもらいまくるぞー!!」楽しそうな銀時と神楽。
「何かの時のために、僕もお菓子作ってきました。」と新八。
新八のもってるかごの中には、カボチャ型のクッキー。
「そんなの必要ないネ。」神楽は、冷やかした。
「通りすがりの子供がお菓子ほしいって言い出すかもしれないだろ」新八はふてくされる。
「そんなこというやつは、私の拳をおみまいするネ。」
「それじゃただの暴力沙汰だから。いいの、これは僕の自己満足なんだから。」
「ほら、うだくだいってないで行くぞ。今日はお菓子の日だからな。」銀時はウキウキしている。
「しかし、どうして僕だけ着ぐるみなんですか」新八は狼になっていた。
「うっさいネ、だめがねの癖に」「僕の扱い低!!」
なんて、話をしながら、お登勢の店・ハチローの店・すまいるへお菓子をもらいに行った。
「なんだか、飲み屋ばかりなんですけど・・・」新八はうんざりしている。
「何いってんだ、新八。歌舞伎町といえば飲み屋も普通の店だろうが」銀時はすでに酔っ払いになっている。
「だめ人間アル」「だめ人間だね。」二人は溜息をつく。

屯所はその頃、多くの子供で大賑わいになっていた。お菓子を配る隊士もみんな仮装している。
どうやら、イメージアップに大いに繋がっているようだ。その中、
「とりっくおあとりーとアル!お菓子よこせよ」と万事屋一行が乗り込んだ。
「おめぇにやったら他のやつにやるやつがなくなるだろぃ」と反抗するのは沖田。
「だったら、いたずらするアル!!」「うけてたちまさァ」といたずらとは程遠い、やり取りの始まり。
「おーい、多串君、お菓子くれー。」銀時はやる気のない声で土方を呼ぶ。
「だから、土方だっつってんだろ。いい加減覚えやがれ」土方は怒りながら飛んでくる。
「何でもいいから・・・」土方のカッコは隊服に犬の耳に尻尾。
「多串君、それは誘ってるって事でいいんだよねぇ」銀時は思わず息を呑む。
「何いってるんだ!!斬るぞコラ!!」土方は相当頭にきている。
「ただでさえ、こんなかっこするのやなんだよ。」とタバコの煙をわざと銀時に吐き出す。
「なんでー、ものっそい似合ってるのにぃ。そういうプレイが・・・」
「お前、これ以上言ったらその首胴体から離れるぞ」土方は首筋に刀を当てる。
「お茶目じゃないのさ。多串君照れんなって。」ところで、と銀時は続ける
「屯所のお菓子って、どこにあるの?」
「あぁ、山崎特製のクッキーを配ってんだ。おーい、山崎」
「はいよっ、新しいのもって来ました。」山崎は両手いっぱいにクッキーを抱えて出てきた。
「大丈夫かぁ、これ、オメーのところのはマヨ入りなんじゃないかぁ」
「上等だコラ。うちの山崎の料理の腕はそんじょそこらの奴とは天と地の差があるんだよ」
「うちの新ちゃんの方が、断然うまいですー」「うちの山崎だってなぁ・・・」
「何ダサい事言ってんだよ。うちの父ちゃんパイロットって言ってる子供くらいダサいよ」
「副長もいい加減にしてください!!」
まったくと同時に呟く山崎と新八。
「山崎さん、よかったら僕のクッキー食べてください。かぼちゃクッキーです。」
「あっ、偶然だね。僕の作ったのもかぼちゃなんだ。
屯所にお菓子をもらいに来るのは子供だから、ヘルシーな方が言いかなって。」
「山崎さん。すごくいい発想ですよそれ。」
大人の喧嘩をよそに子供二人は仲良くクッキーの食べ比べ。
「山崎さんのクッキーおいしい!!すごいなぁ」
「新八君のもおいしいよ。これ、生クリーム入れてる?」
「わかります?うちには銀さんがいるから甘くしないと食べなくて・・・」
「甘くするならこういう方法もあるんだけどさ。」
となにやら、レシピの公開、地味同士は結束するんだねぇ。
「しかし」急に改まって新八が山崎に
「山崎さん、女装なんですね。」「あぁ。これ。屯所は男所帯だからねぇ。俺くらいしか女装しないしさ」
もちろん仕事でだよ。と山崎は笑った。
「というかですね。」新八は、話を続ける「配る側は変装しなくてもいいんですけど。」
「えーーーーーー!!!!!そうなの!?」
山崎の叫び声に、全員が固まる。
「どうした山崎!」一番に駆け寄るのは土方。
「いや、あの・・・」ありがたいけど、今の話を一番聞かれたくない人物。
「何があったんだ」土方は心配そうに覗き込む
「いや、われわれは変装しなくてよかったらしいですよ・・・、副長」
見る見るうちに土方の顔が赤くなる。
「どういうことだ!!近藤さん!!」
「えーっ、俺!?だってお上がやれっていって・・・。」ごにょごにょと口ごもる。
「どうやら、間違った情報が入ってしまっているみたいですね。」と新八は言った。
「でも、」山崎がそれを受けて続ける「子供たちは、俺たちの姿を見て、
楽しんでる感もありますからいいんじゃないんでしょうか。イメージアップには繋がると思いますよ」
「まぁな・・・。しかし、来年はやらんぞ。非番にしてやる」土方は舌打ちをして、そう呟いた。
結局万事屋も最後まで屯所に残ってしまった。
「ねぇねぇ銀ちゃん。写真取りたいアル」言い出したのは神楽。
よほどみんなの仮装大会が楽しかったらしい。
「多串君、こういってるんだけど、カメラある?」
「大概しつけーな。俺は土方だ。カメラか。確かあったなぁ」
土方は部屋からカメラを持ってきて、台にすえつけるとセルフタイマーのシャッターを押した。
『カシャ』
なんだかんだいっても、写真と想い出の中ではなんだかみんな笑顔。
神楽は、押入れの壁に写真を貼って、眠りについた。


えー、いまさらですが、ハロウィンです。ブログにはあげたのですが、すっかり忘れていたみたいで・・・。
がんばって書いたから、世に出そうと思いました。
意外とハロウィンって広まってますよね。私は隣に川崎市があるので、川崎ハロウィンパーティーの
宣伝を見ると、もう秋かなんて思います。お祭りに参加した事はないですが・・・。
遭遇した事はあります、結構楽しそうでしたよ。
これは、苦しみました。当初お妙さんと近藤さんを絡ませたり、沖田神楽を長くしようとしたりしたのですが、
かなりのっぺりしたので、来年に持ち越そうかと・・・。
そして、銀時新八にするつもりも書いてる途中でカブト狩り見てしまって、あっさり山崎新八と土方銀時やってしまいました。
最後、いきなり神楽で終わりって言うのもちょっと・・・。
来年がんばります・・・。          
ちなみに、銀ちゃん土方さんがボケに使ったハロウィン実在のバンドです。
高校時代に洋楽にものっそいはまりまして、しかもハードロックとかメタルとか。
その頃アルバムか何かを出したばかりで、聞いてたラジオから結構宣伝流れてました。
多分来年も使うでしょう。             11/13

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